「だから嫌だっていつも断ってるのに、よりにもよって⋯⋯」

「俺たちと仕事するのが、そんなに不満か?」

 会議室のデスクに頬杖をつき大きなため息をこぼすと、正面に座る伊織と透吾が面白いとほくそ笑んでいた。

 とりあえずやってきた休憩スペース。けれどひと息つく間もなくすぐ様集合をかけられ隣の会議室へ。中へ入れば、そこには今旬の男とその元カノとなってしまったらしい女の姿が揃っていた。

 伊織とあかり、二人だけの空間に私一人だけだったならばある意味針のむしろだったろうが、そこに透吾がいてくれたお陰で幾分か場も和むというもの。元恋人同士の二人は平然を装ってそこにいるが、どことなく異様な雰囲気が妙な空気を漂わせているのも事実だった。

「で、トキさんは?」と透吾に問うたつもりが、「兄貴ならもう来るよ」と答えたのは伊織。あんたに聞いてないよと言葉にこそしはしないが、気になるのはひと席空けた先に座るその横顔だ。近からず遠からずで私の隣に腰掛ける綺麗な姿を何気なくチラ見してしまうのは、やはりどこか引っかかるものがあるから。

 スマホ片手にただ静か⋯⋯というか、冷静すぎるその態度に、胸を撫で下ろすどころか居心地の悪さしか感じなかった。