元より群れることが苦手で協調性もなく、女子特有の馴れ合いだとかグループ意識など皆無。仲の良い友人もいるし社交的でもあるが、必要性がない限り誰かに合わせて行動することなどしない、というのが「『伏見絆利』という女」と周囲からは解釈されていた。

 しかし“群れない”というのは女の間では特異な存在とされ、異質だと揶揄される原因の一つでもあったのだ。人に媚びないという性格そのものが、群れを好む女子たちにとっては面白くなく、良くも悪くも目立っていたのだろう。特に男に媚びる女たちほど、そういうタイプの人間をよくは思わない。「目立ちたがり屋」、「男の気を引きたいだけ」、「オバサンのくせに」等々言われ放題なのは知っていたが、いちいちそれに楯突くほどの気力もない。だから消化しきれない部分は全て、聞き流すことに決めていた。それは良くも悪くも年の功が教えてくれた、当たり障りのない世渡りの方法だった。

 何より、それが「私」なのだからしょうがない。

 誰に何を言われても、どう蔑まされようとも、長年培ってきた「らしさ」を捨ててまで、周りに染まるようなことはできなかったのだ。