片や短髪でモデルばりのスタイルの持ち主、片や爽やかな細身の好青年。今やそのステータスがシングルに戻ったらしい榊伊織の側には、女子社員たちが行ったり来たり。その隣で完全に巻き添えを食っている彼の先輩、向上透吾は冷めた表情を隠しもせず「行くぞ」と彼を突っついている。
彼女たち曰く、二人ともタイプは違えど「社内一のイケメン」だともてはやされているだけに、顔だけは嫌味なほど男前。この会社に在籍する女子たちにとっては憧れの存在なのだと聞かされたのは記憶に新しい。彼らの「恋人」という肩書きはある意味、彼女たちにはステイタスだそうで。それ故に皆が皆、虎視眈々と次の「彼女」の座を狙っている────と、まるで雑誌のコラムでも読むよう説明する碧子の表情はどこか楽しげだった。
「女同士の骨肉の争い勃発⋯⋯って感じ?」
「あんだけ男前だったら、女がほっとかないでしょ?」
「それは、この会社の女子だけなんじゃない?」
「なんなら、絆利も混ざってみる?」
「はっ、冗談。もう『恋』は懲り懲り⋯⋯」
いつかの光景が頭を過り感慨深く呟く私に、これまでの成り行きを誰よりも一番よく知っている碧子は「ごめん」とバツが悪そうに謝る。こちらこそ気を遣わせたことに謝罪をすれば、「あんたはもっと積極的になるべきだった」と未だに“あの時”の私に怒っていた。
彼女たち曰く、二人ともタイプは違えど「社内一のイケメン」だともてはやされているだけに、顔だけは嫌味なほど男前。この会社に在籍する女子たちにとっては憧れの存在なのだと聞かされたのは記憶に新しい。彼らの「恋人」という肩書きはある意味、彼女たちにはステイタスだそうで。それ故に皆が皆、虎視眈々と次の「彼女」の座を狙っている────と、まるで雑誌のコラムでも読むよう説明する碧子の表情はどこか楽しげだった。
「女同士の骨肉の争い勃発⋯⋯って感じ?」
「あんだけ男前だったら、女がほっとかないでしょ?」
「それは、この会社の女子だけなんじゃない?」
「なんなら、絆利も混ざってみる?」
「はっ、冗談。もう『恋』は懲り懲り⋯⋯」
いつかの光景が頭を過り感慨深く呟く私に、これまでの成り行きを誰よりも一番よく知っている碧子は「ごめん」とバツが悪そうに謝る。こちらこそ気を遣わせたことに謝罪をすれば、「あんたはもっと積極的になるべきだった」と未だに“あの時”の私に怒っていた。