バイトは楽しいがメンバーが嫌だ────と彼女に愚痴ったところで状況は何も変わらないが、それでもゴネたくなるほど今の人事配置は気苦労の種だった。

「それに関しては同情するけど、女としては分からなくもないかな?」

「若者の肩持つ気? 裏切ったな」

「そうじゃなくて、隣の芝生は青く見えるってコト。絆利は人見知りしないでしょ? 基本的に何でもウェルカムで。だから皆、あんたの側が居心地良いんだよ。私もそうだし」

「それはありがとう。お褒めに預かり光栄です」

 褒められて悪い気はしないが、そんなに上げられても何も出ないよ照れくささを苦笑いで隠す。

「元より、あんた何もしてないじゃない」

「だから言ってんのよ! 若い子に相手に喧嘩売るほど私も馬力ないので」

 深いため息に沈むよう、廊下の手摺りにめいっぱい体重をかけ凭れる。そのままの態勢で何となく見下ろしたフロアに見つけてしまったのは、取り巻きの女子社員たちに案外適当な愛想を振りまきながら、颯爽と階段を駆け上がってくる長身の二人組だった。