碧子にとっては昼休みの間の暇つぶし。耐えぬ雑談に笑い合えるこんなひと時も悪いものではないと、二人して階下を眺める。女同士の他愛もない話は盛り下がることはなく、いつの間にか近づいてきていた休憩の終了時間。それに合わせたかのよう、途端に騒がしくなるフロアに思わず視線がいった。

　あまりの騒ぎように何事かと問えば、社内ゴシップに敏感な女子社員の間で今一番ホットな話題だと手摺りに凭れる。それは、とあるカップルの破局話だと言うその物言いは淡々としたものだった。

「なぁんだ、何騒いでんのかと思ったら⋯⋯」

「伊織くんとあかりが別れたんだって」

「あっそ」と相槌を打ちながら、瞬間彼女を凝視する。何事かと不審がる友人に、思わず聞き流してしまうところだったと声を上げた。

「イオ、彼女いたの！？」

「えぇ！？　今更？　あんだけ仲良いクセに、知らなかったの？」

「仲良いって言っても、たかだか四ヶ月くらいの付き合いだし。他人のゴシップネタ根掘り葉掘り聞くほど私も暇じゃないですから」