「…はい?」
何かの聞き間違いかと思って聞き返したけど、目の前のお客様はニコニコ人好きのする笑みを浮かべているだけ。
…うん、やっぱり聞き間違いだな。
「…お客様、ご用件をお伺い致します」
「あ、うん。口座作りたいんですけどー」
「口座開設でございますね、かしこまりました。ご本人様確認の書類が必要ですが、本日は免許証などお持ちでしょうか?」
ここは車社会の地方なので、高齢者以外はほぼ免許証を持っている。でも、
「免許?あー今日は持ってないな。家置いてきちゃった」
若者は、そう言ってペロ、と舌を出した。綺麗な赤い舌。
というか、よく見るとこの若者、舌だけじゃなくてめちゃくちゃ綺麗な顔してる。俗にいうイケメンと分類される生き物だ。しかも、かなり極上の。
当然イケメン好きの私はもっと見ていたいところだけども、あいにく今は仕事中。
「そうですか。では保険証など…」
「ていうか何。もしかしてオネーサン、俺の個人情報に興味ある感じ?」
「…は?」
ん?
「そーんな回りくどいことしなくても教えてあげるよ?オネーサン可愛いから、大サービス♡」
この若者…なにやら様子がおかしい!!