「あの……さっきの音でわかったと思いますけど」




私は目の前でミカンをむく男に言葉が届いているのか不安になりながらも言葉を続ける。できるだけ真剣に響くような声色で。




「ここの壁、すっごい薄いんです!!だから気を付けてください!!」



「気を付けてってナニを~?」



「何ってそれは、だから、……声の大きさとか…」





って何これ!?なんか自分で言っててすっごい恥ずかしいんですけど!?





「あっれ~?」




卑猥男――クウマの楽しそうな声に目線を上げると、私を見透かすような不敵な笑みを浮かべていた。




「ココちゃん、なんか顔真っ赤になってるけど?そっかぁ、あんな声聞いたらココちゃんもたまんないよねー」



「っは、はぁ!?あのね、私は真剣に注意を…!」



「俺もさぁ、たまんないんだよね」



「っきゃ、」





突然、クウマの腕が伸びてきて。



強い力で右腕を引っ張られた、と思ったら、すぐ目の前にクウマの端正な顔があった。




「ココちゃんのおかげで、いいところでお預けくらっちゃったからさ?」