私は決して朝が得意なわけじゃない。ほどほどに毎朝焦りながら通勤するタイプ。



だからナンパ師・クウマといつまでも立ち話をしているわけにもいかず、アパートの廊下を歩き始めた。クウマもノロノロとその後を着いてくる。



「ていうかさー、オネーさん…っていうか、ココちゃん」


「え、何で私の名前!?」




だけどすぐに足を止めた。




「えー?」



ゆるーくクウマが笑う。




「だって仕事中下げてたじゃん、職員証。俺女の子の名前って忘れないんだよねー」



「…なるほど」




不気味な特技だ。




私は歩みを再開した。




「ねーえ、」





クウマが小走りで私の隣に並ぶ。





「ココちゃんってさあ、彼氏いんの?」



「……極秘です」





名前と住居が知られてしまっている今、私はそれ以上の個人情報はなんとしてもこの男に与えたくないと思った。





「極秘?あは、ココちゃんってやっぱオモロイね。はじめて会ったときも思ったけどー」



「…あなたはぶっ飛びすぎだよ。一体何股してるの!?いくら若いからって弾けすぎだよ」



「ココちゃんも若いでしょー?まだ27じゃん」



「…は!?」




また足を止めてしまった。今日は朝の掃除に間に合わないかも。




「なんで年齢知ってんの…!?」



「あは、やっぱ当たった?俺、女の子の年齢当てるの超得意なんだよねー」




いらない特技だ!!