部長と社長は随分長いこと応接室にこもって話し込んでいた。
そして戻った社長から、外出するからそのまま帰れるように準備して付いてくるよう指示された。
行き先を聞いていなかった私は、景色がいいホテルの素敵なレストランの個室で、社長とふたりで食事をしていた。
今日は同期数人と飲みに行く約束をしていたのに突然予定をねじ込まれてかなり残念に思っていたけど、神戸牛の文字通りとろける旨さに一瞬で社長を許そうと思った。
それにしても、なぜ私は社長と神戸牛を食べているのか。
お世辞にも会話が弾んでいるとは言いがたく、むしろほぼ無言のまま食事が進み、もうすぐデザートが運ばれてくる感じだ。
最近では社長とランチに行く機会も多いのだが、普段はもう少し会話があるような、、
神戸牛の美味しさに興奮していた余韻が薄れ、多少の気まずさを感じ始めたところで、ようやく社長が話し始めた。
流れ的に当然ではあるが、今日の分室からの電話の件だった。
端的にいうと、今日のあの電話は単なる嫌がらせなのだという。
過去に社長の父親が営業事務の女性と浮気をしたことがあったらしく、その時も今日のような電話がその女性宛にしばらく続いたそうだ。
私は浮気なんてしていないし何か行き違いがあるのだろうか、、それでお詫びの神戸牛なのかな?
「昨日母に、お前のことが好きだから結婚したいと話したせいだと思う」
ラブストーリーが突然過ぎた。
何がどうしてそんなことになっているのか、皆目見当がつかない。
私はただの新入社員だし、お見合いとかもしてないから、政略的な何かではない。
もちろん社長と私は手を繋いだことすらないスーパープラトニックな関係だ。
ちなみに愛情を確認するような会話が交わされたことも一切ない。
意味がわからない。
もう一度いう。
全く意味がわからない。
あまりの事態にかなり怪訝な顔をしてしまったのかもしれない。
「お前はどういうつもりで、俺が選んだ服を着て、俺と一緒に食事をしているんだ?」
と社長に聞かれた。
どういうつもりって、この服は社長に恥をかかせないための制服みたいなものだし、この食事はお詫びと解釈しており、これまでの食事も仕事の一環だと思っていたのだが、何となくそれを口にしてはいけない雰囲気が漂っている。
社長は私が社長のことを好きだと思っているのだろうか。
いや違う?さっき社長が私を好きだって言ってたか?
突然降って湧いた、結婚というパワーワードのせいで、完全に混乱している。
「ちなみに社長はどういうつもりだったんですか?」
なんでわざわざこんなアホな質問をしてしまったのかと、即後悔することとなった。
「好きな女を着飾らせて、デートに誘っているつもりだった」
念のためもう一度だけいう。
本当に意味がわからない。
どうリアクションするのが正解なのかわからず、もの凄く目を泳がせながら、私はデザートを最後まで食べきった。
夏みかんのゼリーと甘いヨーグルト風味のババロアが絶妙なハーモニーを奏で、目にも美しく夏らしい爽やかな逸品だった。
どうしよう。
社長が私が何か言うのを待っているのは明らかだ。
次はお前の番だ!と言わんばかりのそのどや顔を今すぐやめて欲しい。
「少しだけ考える時間を頂けますか?」
社長は心なしか不満そうな顔をしていたが、なんとか数日の猶予をもらい、その日は無事に家まで送ってもらえた。
そして戻った社長から、外出するからそのまま帰れるように準備して付いてくるよう指示された。
行き先を聞いていなかった私は、景色がいいホテルの素敵なレストランの個室で、社長とふたりで食事をしていた。
今日は同期数人と飲みに行く約束をしていたのに突然予定をねじ込まれてかなり残念に思っていたけど、神戸牛の文字通りとろける旨さに一瞬で社長を許そうと思った。
それにしても、なぜ私は社長と神戸牛を食べているのか。
お世辞にも会話が弾んでいるとは言いがたく、むしろほぼ無言のまま食事が進み、もうすぐデザートが運ばれてくる感じだ。
最近では社長とランチに行く機会も多いのだが、普段はもう少し会話があるような、、
神戸牛の美味しさに興奮していた余韻が薄れ、多少の気まずさを感じ始めたところで、ようやく社長が話し始めた。
流れ的に当然ではあるが、今日の分室からの電話の件だった。
端的にいうと、今日のあの電話は単なる嫌がらせなのだという。
過去に社長の父親が営業事務の女性と浮気をしたことがあったらしく、その時も今日のような電話がその女性宛にしばらく続いたそうだ。
私は浮気なんてしていないし何か行き違いがあるのだろうか、、それでお詫びの神戸牛なのかな?
「昨日母に、お前のことが好きだから結婚したいと話したせいだと思う」
ラブストーリーが突然過ぎた。
何がどうしてそんなことになっているのか、皆目見当がつかない。
私はただの新入社員だし、お見合いとかもしてないから、政略的な何かではない。
もちろん社長と私は手を繋いだことすらないスーパープラトニックな関係だ。
ちなみに愛情を確認するような会話が交わされたことも一切ない。
意味がわからない。
もう一度いう。
全く意味がわからない。
あまりの事態にかなり怪訝な顔をしてしまったのかもしれない。
「お前はどういうつもりで、俺が選んだ服を着て、俺と一緒に食事をしているんだ?」
と社長に聞かれた。
どういうつもりって、この服は社長に恥をかかせないための制服みたいなものだし、この食事はお詫びと解釈しており、これまでの食事も仕事の一環だと思っていたのだが、何となくそれを口にしてはいけない雰囲気が漂っている。
社長は私が社長のことを好きだと思っているのだろうか。
いや違う?さっき社長が私を好きだって言ってたか?
突然降って湧いた、結婚というパワーワードのせいで、完全に混乱している。
「ちなみに社長はどういうつもりだったんですか?」
なんでわざわざこんなアホな質問をしてしまったのかと、即後悔することとなった。
「好きな女を着飾らせて、デートに誘っているつもりだった」
念のためもう一度だけいう。
本当に意味がわからない。
どうリアクションするのが正解なのかわからず、もの凄く目を泳がせながら、私はデザートを最後まで食べきった。
夏みかんのゼリーと甘いヨーグルト風味のババロアが絶妙なハーモニーを奏で、目にも美しく夏らしい爽やかな逸品だった。
どうしよう。
社長が私が何か言うのを待っているのは明らかだ。
次はお前の番だ!と言わんばかりのそのどや顔を今すぐやめて欲しい。
「少しだけ考える時間を頂けますか?」
社長は心なしか不満そうな顔をしていたが、なんとか数日の猶予をもらい、その日は無事に家まで送ってもらえた。