この会社には『分室』というものが存在している。
社長がいるこのビルには、営業部と人事部とシステム部があり、配属前の登録者の管理を行っているコーディネーター部門の人員も含め、ほとんどの人が営業部に属している。
詳しくはわからないけれど、おそらく人事部が総務を兼務している気がする。
分室は経理部の別称だと聞いた。
経理をメインとしているが総務の機能も分室が担っているようなので、人事部は分室から出向しているという扱いなのかもしれない。
社長の下で働き出して数ヶ月、定期的に分室から連絡は入るが、すぐ社長へ取り次いでいるし、私にとって分室はベールに包まれた状態だ。
分室のトップは社長の母親で、分室とは社長の自宅なのだという。
社長と人事部以外の人間とは電話の取り次ぎ以上の接点をもたない徹底ぶりは少し異様で、関わらない方がいいと感じていた。
*
ある日、分室から私宛に電話が掛かってきた。
保留になってるのをいいことに何度も「私?」と確認してしまったし、何かしてしまったのかとひとしきり頭を悩ませたが、思い当たることがなくて混乱した。
意を決して電話に出ると「いつまでまたせるの?」とお怒りで、完全にしくじった。
電話の内容は、おそらく私を素通りして社長へ回している経理関係の書類のことで、内容についてはちんぷんかんぷん。
「確認するので折り返しご連絡させて下さい」
とひたすら謝り続け、とりあえず電話を終えた。
社長にこのことを伝えて内容の確認をお願いすると、二度手間で面倒だからと社長が直接分室に折り返すことになった。
だよね?とも思ったが、本当にそれで大丈夫なのか?と、私の危険察知センサーに何か引っ掛かるものを感じた。
その後すぐ、再び分室から私宛に電話が入る。
怒られたくないので今度はサクッと電話に出たが、やっぱり怒られた。
「忙しい社長の手を煩わせないためにあなたに頼んだのに、社長に電話を折り返しさせるなんて!信じられない!常識がない!一体何を考えているの?本当ありえない!あなた馬鹿なの?死ぬの?」
みたいなことを遠回しに言われたような遠回しでもなかったような。
とにかくボロクソに怒られたことは間違いない。
さすが私の優秀な危険察知センサー、誤作動知らずだ。
それにしても、何で突然こんなことになったのか全然わからなくて困ってしまい、とりあえず部長に相談した。
部長は社長の母親と面識があり、何か思い当たるふしがあるようだった。
「少し社長に探りを入れてくるからとりあえず気にするな」
と言われ、それ以上私にできることはなくなってしまった。
せめて、さっき社長に丸投げした経理からの書類を自分で見直してみよう。
パソコンの共有フォルダの中に経理関係のファイルもあった気がするから、そこを確認したら何かわかるかもしれない。
今後経理関係の仕事が回ってくるようになるとしたら、いちから勉強しないと対応できない。
大学でちゃんと授業を受けとけば良かった。
社長がいるこのビルには、営業部と人事部とシステム部があり、配属前の登録者の管理を行っているコーディネーター部門の人員も含め、ほとんどの人が営業部に属している。
詳しくはわからないけれど、おそらく人事部が総務を兼務している気がする。
分室は経理部の別称だと聞いた。
経理をメインとしているが総務の機能も分室が担っているようなので、人事部は分室から出向しているという扱いなのかもしれない。
社長の下で働き出して数ヶ月、定期的に分室から連絡は入るが、すぐ社長へ取り次いでいるし、私にとって分室はベールに包まれた状態だ。
分室のトップは社長の母親で、分室とは社長の自宅なのだという。
社長と人事部以外の人間とは電話の取り次ぎ以上の接点をもたない徹底ぶりは少し異様で、関わらない方がいいと感じていた。
*
ある日、分室から私宛に電話が掛かってきた。
保留になってるのをいいことに何度も「私?」と確認してしまったし、何かしてしまったのかとひとしきり頭を悩ませたが、思い当たることがなくて混乱した。
意を決して電話に出ると「いつまでまたせるの?」とお怒りで、完全にしくじった。
電話の内容は、おそらく私を素通りして社長へ回している経理関係の書類のことで、内容についてはちんぷんかんぷん。
「確認するので折り返しご連絡させて下さい」
とひたすら謝り続け、とりあえず電話を終えた。
社長にこのことを伝えて内容の確認をお願いすると、二度手間で面倒だからと社長が直接分室に折り返すことになった。
だよね?とも思ったが、本当にそれで大丈夫なのか?と、私の危険察知センサーに何か引っ掛かるものを感じた。
その後すぐ、再び分室から私宛に電話が入る。
怒られたくないので今度はサクッと電話に出たが、やっぱり怒られた。
「忙しい社長の手を煩わせないためにあなたに頼んだのに、社長に電話を折り返しさせるなんて!信じられない!常識がない!一体何を考えているの?本当ありえない!あなた馬鹿なの?死ぬの?」
みたいなことを遠回しに言われたような遠回しでもなかったような。
とにかくボロクソに怒られたことは間違いない。
さすが私の優秀な危険察知センサー、誤作動知らずだ。
それにしても、何で突然こんなことになったのか全然わからなくて困ってしまい、とりあえず部長に相談した。
部長は社長の母親と面識があり、何か思い当たるふしがあるようだった。
「少し社長に探りを入れてくるからとりあえず気にするな」
と言われ、それ以上私にできることはなくなってしまった。
せめて、さっき社長に丸投げした経理からの書類を自分で見直してみよう。
パソコンの共有フォルダの中に経理関係のファイルもあった気がするから、そこを確認したら何かわかるかもしれない。
今後経理関係の仕事が回ってくるようになるとしたら、いちから勉強しないと対応できない。
大学でちゃんと授業を受けとけば良かった。