タイピングと資料作成をひたすら繰り返す日々が続いていたが、作業スピードはかなり上がったと思う。
作業効率を上げるためにオフィス系ソフトの勉強を独自に始め、同時に秘書検定の勉強も始めていた。
秘書検定に意味があるのかはわからなかったが、少なくとも、秘書の仕事がどういうものかは把握できた。
イメージ通りのスケジュール管理や来客対応の他に、会議や商談の準備、今勉強している書類作成など多岐に及ぶ。
あとは、社長の窓口として外部とのやり取りが多いことを考え、一刻も早く一般教養やビジネスマナーを習得する必要があるだろう。
今はひたすらパソコンスキルを上げるための訓練が続いているが、やるべきことは多くあるので、迷いや不安がだいぶ軽減し、気持ちに少し余裕ができた。
*
社長室で一日の大半を社長と過ごすようになり、さすがに最初の頃のように息が詰まるようなことはなくなった。
社長の方も同じように感じているのか、時折28歳の素の表情を見せることが多くなってきたように思う。
いつもの怒ったような高圧的な態度は、年上の社員達に舐められないようにするための、社長なりの防御なのかもしれない。
研修中、営業の先輩が休憩室で「俺が社長をやった方がまだマシだ」と、社長のことをボロクソに言っているのを耳にしたことがあった。
その先輩が言っていたことは間違いで、彼は多分社長の足下にも及ばないカスみたいな存在だ。
社長は若くて経験が少ないというだけで、おそらくかなり賢いし、相当な努力家だ。
ただ、人との関係を築くのが苦手なせいでだいぶ損をしていて、そのせいで社長としての地位を確立することにも支障をきたしていると思われる。
本来なら父親から教えを請い、段階を踏んで社長としての適性を備えていくところなのだろうが、父親の急死という悲劇にあった社長にはその時間がなかった。
そんな中で会社を存続させている社長の努力は計り知れない。
せめて身近で味方になってくれる人を作ればいいのに、不器用過ぎる社長は全方向に威嚇射撃を繰り返し、何人たりとも近寄らせないのだから、そこに関しては馬鹿なのかな?としか思えない。
そこで、秘書である私が一肌脱ごうではないか!
*
営業部長はこの会社の立ち上げ時から働いていて、前社長とは旧知の仲だったのだという。
切り崩すなら彼しかいない。
そう考えた私は、全身全霊の若い子ぶりっこを発動させて、営業部長に近付いた。
「会社のことや仕事のこと、色々教えて欲しいんです」
と目をキラキラさせてお願いしたら
「ん?勉強熱心でいい子だな!」
と、すぐランチに誘ってくれた。
実際部長の話は参考になることが多く、ランチを取りながら夢中でメモをしていたら、その後も部長の都合がつく限り時間を取ってくれることになった。
しばらくの間それを繰り返していたら、ひと月程で私はスッカリ部長のお気に入りとなり、いつしか娘のように可愛がられるようになっていたのだった。
仕事で困ったことがあれば気楽に相談に乗ってくれるようになり、部長が社長の秘書である私の力強い後ろ楯となったことが周知されるようになった。
同時進行で、営業の要となる数人にも、意識的に挨拶したり用事を作って話しかけたりして、少しでも親近感を持ってもらえるように動いていた。
このひと手間で、社長が無茶振りをして営業と揉めても、後で私がフォローを入れるだけで丸く納まることもあるのだから、大違いなのだ。
私の暗躍?により、以前と比べて少しは仕事がやりやすくなったのではなかろうか。
私の方も継続して勉強を進め、秘書としてそれなりにそれっぽい感じになってきたと思わなくもないし。
作業効率を上げるためにオフィス系ソフトの勉強を独自に始め、同時に秘書検定の勉強も始めていた。
秘書検定に意味があるのかはわからなかったが、少なくとも、秘書の仕事がどういうものかは把握できた。
イメージ通りのスケジュール管理や来客対応の他に、会議や商談の準備、今勉強している書類作成など多岐に及ぶ。
あとは、社長の窓口として外部とのやり取りが多いことを考え、一刻も早く一般教養やビジネスマナーを習得する必要があるだろう。
今はひたすらパソコンスキルを上げるための訓練が続いているが、やるべきことは多くあるので、迷いや不安がだいぶ軽減し、気持ちに少し余裕ができた。
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社長室で一日の大半を社長と過ごすようになり、さすがに最初の頃のように息が詰まるようなことはなくなった。
社長の方も同じように感じているのか、時折28歳の素の表情を見せることが多くなってきたように思う。
いつもの怒ったような高圧的な態度は、年上の社員達に舐められないようにするための、社長なりの防御なのかもしれない。
研修中、営業の先輩が休憩室で「俺が社長をやった方がまだマシだ」と、社長のことをボロクソに言っているのを耳にしたことがあった。
その先輩が言っていたことは間違いで、彼は多分社長の足下にも及ばないカスみたいな存在だ。
社長は若くて経験が少ないというだけで、おそらくかなり賢いし、相当な努力家だ。
ただ、人との関係を築くのが苦手なせいでだいぶ損をしていて、そのせいで社長としての地位を確立することにも支障をきたしていると思われる。
本来なら父親から教えを請い、段階を踏んで社長としての適性を備えていくところなのだろうが、父親の急死という悲劇にあった社長にはその時間がなかった。
そんな中で会社を存続させている社長の努力は計り知れない。
せめて身近で味方になってくれる人を作ればいいのに、不器用過ぎる社長は全方向に威嚇射撃を繰り返し、何人たりとも近寄らせないのだから、そこに関しては馬鹿なのかな?としか思えない。
そこで、秘書である私が一肌脱ごうではないか!
*
営業部長はこの会社の立ち上げ時から働いていて、前社長とは旧知の仲だったのだという。
切り崩すなら彼しかいない。
そう考えた私は、全身全霊の若い子ぶりっこを発動させて、営業部長に近付いた。
「会社のことや仕事のこと、色々教えて欲しいんです」
と目をキラキラさせてお願いしたら
「ん?勉強熱心でいい子だな!」
と、すぐランチに誘ってくれた。
実際部長の話は参考になることが多く、ランチを取りながら夢中でメモをしていたら、その後も部長の都合がつく限り時間を取ってくれることになった。
しばらくの間それを繰り返していたら、ひと月程で私はスッカリ部長のお気に入りとなり、いつしか娘のように可愛がられるようになっていたのだった。
仕事で困ったことがあれば気楽に相談に乗ってくれるようになり、部長が社長の秘書である私の力強い後ろ楯となったことが周知されるようになった。
同時進行で、営業の要となる数人にも、意識的に挨拶したり用事を作って話しかけたりして、少しでも親近感を持ってもらえるように動いていた。
このひと手間で、社長が無茶振りをして営業と揉めても、後で私がフォローを入れるだけで丸く納まることもあるのだから、大違いなのだ。
私の暗躍?により、以前と比べて少しは仕事がやりやすくなったのではなかろうか。
私の方も継続して勉強を進め、秘書としてそれなりにそれっぽい感じになってきたと思わなくもないし。