女性と付き合ったことはあるが、俺から告白というものはした経験がなかった。
というより、こんな風に人を好きになったことがなかった気がする。
初恋、なのか?
考え過ぎるな、失敗は許されない。
と、とりあえず、夜景が素晴らしいホテルのレストランを予約しておこう。
予約した店まで少し距離があるので早めに会社を出ることにした。
柄にもなく緊張しているのか、手汗が凄くて、運転がしにくい。
移動時間が長い今日に限って、話題が全く思い浮かばないので、苦し紛れにカーラジオを付ける。
ああ、なんで俺は近場の店にしなかったのか。
店に到着した後も、何をどう話せばいいのかわからなくて、ほとんど話ができないまま、コースが進んでしまった。
ああ、酒が飲みたい、帰りの運転さえなければ、今すぐ強い酒を煽りたい気分だ。
彼女はいつも通りに美味しい料理を心ゆくまで堪能し、満たされた顔をしていた。
せめてもの救いだな、とりあえず良かった。
さすがにこれ以上黙っている訳にはいかないだろう。
デザートが運ばれてくる前に、俺はようやく話し始めた。
*
まずは今日の電話の説明から。
自分とは無関係な昔の話を聞かされて、話の意図が掴めずに首をかしげる彼女は相変わらずかわいい。
「昨日母に、お前のことが好きだから結婚したいと話したせいだと思う」
かなり長い時間、彼女は俺のことを見つめていた。
そして、何かを必死で考えている様子が伺える。
目線が上に行き何かを思い浮かべたけれど、今度は眉間に皺を寄せ「全然意味がわからない」といったところだろうか。
あまりの衝撃に表情が全てを語ってしまっているその様子があまりにもかわいくて、思わず笑みが漏れてしまう。
彼女は俺の気持ちにはこれっぽっちも気付いていなかったのだろう、まあ当然か。
一応告白を終え、気持ちに余裕ができたせいか、少し意地悪をしたい気分になってしまう。
「お前はどういうつもりで、俺が選んだ服を着て、俺と一緒に食事をしているんだ?」
あ、こいつ、今だいぶ失礼なこと考えていやがるな。
ちょっとむかつくな。
不穏な空気が流れて焦った彼女が墓穴を掘った。
「ちなみに社長はどういうつもりだったんですか?」
自分の顔がいいのは十分知ってるので、渾身のキメ顔で甘く囁いた。
「好きな女を着飾らせて、デートに誘ってるつもりだった」
馬鹿め、慌てふためくそのかわいい様子を、俺に存分に見せるがいい。
俺の言葉に顔を赤くしてアワアワしているかわいい彼女を堪能していたら、デザートが運ばれてきた。
空気が変わって持ち直した彼女は、目を泳がせながらもデザートを食べきった。
彼女にとっては地獄のような時間なのかもしれないが、俺はこのまま時が止まればいいと思っていた。
返事なんて聞かなくてもわかる。
「少しだけ考える時間を頂けますか?」
とりあえず首の皮一枚繋がった。
*
今日の彼女の様子からわかるのは、彼女にとって俺は恋愛対象ではなかったということだろう。
まあ、今頃俺のことを意識して、悶え苦しんでいるとは思うが。
ここからが俺の腕の見せどころだ。
返事を保留したってことは、ほぼ断られたのと同じ。
少しでも俺のことを好きという気持ちがあれば、あんな反応にはならなかっただろう。
俺が結婚という言葉を出したから、好きじゃないけど試しに付き合ってみるという選択肢は消える。
母から攻撃を受けたことも、俺とのことを前向きに考えようとする可能性を確実に潰したはずだ。
それでも返事を保留した理由は、断れば仕事がしにくくなる、その一点しかない。
最悪、辞めることもあり得る。
そんなことはさせないが。
彼女が俺を嫌いじゃない限り、俺は絶対彼女を諦めない。
嫌われてさえいなければ、これから好きになってもらえばいいだけだ。
というより、こんな風に人を好きになったことがなかった気がする。
初恋、なのか?
考え過ぎるな、失敗は許されない。
と、とりあえず、夜景が素晴らしいホテルのレストランを予約しておこう。
予約した店まで少し距離があるので早めに会社を出ることにした。
柄にもなく緊張しているのか、手汗が凄くて、運転がしにくい。
移動時間が長い今日に限って、話題が全く思い浮かばないので、苦し紛れにカーラジオを付ける。
ああ、なんで俺は近場の店にしなかったのか。
店に到着した後も、何をどう話せばいいのかわからなくて、ほとんど話ができないまま、コースが進んでしまった。
ああ、酒が飲みたい、帰りの運転さえなければ、今すぐ強い酒を煽りたい気分だ。
彼女はいつも通りに美味しい料理を心ゆくまで堪能し、満たされた顔をしていた。
せめてもの救いだな、とりあえず良かった。
さすがにこれ以上黙っている訳にはいかないだろう。
デザートが運ばれてくる前に、俺はようやく話し始めた。
*
まずは今日の電話の説明から。
自分とは無関係な昔の話を聞かされて、話の意図が掴めずに首をかしげる彼女は相変わらずかわいい。
「昨日母に、お前のことが好きだから結婚したいと話したせいだと思う」
かなり長い時間、彼女は俺のことを見つめていた。
そして、何かを必死で考えている様子が伺える。
目線が上に行き何かを思い浮かべたけれど、今度は眉間に皺を寄せ「全然意味がわからない」といったところだろうか。
あまりの衝撃に表情が全てを語ってしまっているその様子があまりにもかわいくて、思わず笑みが漏れてしまう。
彼女は俺の気持ちにはこれっぽっちも気付いていなかったのだろう、まあ当然か。
一応告白を終え、気持ちに余裕ができたせいか、少し意地悪をしたい気分になってしまう。
「お前はどういうつもりで、俺が選んだ服を着て、俺と一緒に食事をしているんだ?」
あ、こいつ、今だいぶ失礼なこと考えていやがるな。
ちょっとむかつくな。
不穏な空気が流れて焦った彼女が墓穴を掘った。
「ちなみに社長はどういうつもりだったんですか?」
自分の顔がいいのは十分知ってるので、渾身のキメ顔で甘く囁いた。
「好きな女を着飾らせて、デートに誘ってるつもりだった」
馬鹿め、慌てふためくそのかわいい様子を、俺に存分に見せるがいい。
俺の言葉に顔を赤くしてアワアワしているかわいい彼女を堪能していたら、デザートが運ばれてきた。
空気が変わって持ち直した彼女は、目を泳がせながらもデザートを食べきった。
彼女にとっては地獄のような時間なのかもしれないが、俺はこのまま時が止まればいいと思っていた。
返事なんて聞かなくてもわかる。
「少しだけ考える時間を頂けますか?」
とりあえず首の皮一枚繋がった。
*
今日の彼女の様子からわかるのは、彼女にとって俺は恋愛対象ではなかったということだろう。
まあ、今頃俺のことを意識して、悶え苦しんでいるとは思うが。
ここからが俺の腕の見せどころだ。
返事を保留したってことは、ほぼ断られたのと同じ。
少しでも俺のことを好きという気持ちがあれば、あんな反応にはならなかっただろう。
俺が結婚という言葉を出したから、好きじゃないけど試しに付き合ってみるという選択肢は消える。
母から攻撃を受けたことも、俺とのことを前向きに考えようとする可能性を確実に潰したはずだ。
それでも返事を保留した理由は、断れば仕事がしにくくなる、その一点しかない。
最悪、辞めることもあり得る。
そんなことはさせないが。
彼女が俺を嫌いじゃない限り、俺は絶対彼女を諦めない。
嫌われてさえいなければ、これから好きになってもらえばいいだけだ。