予想通り、彼女を俺の直属にするという発表に、皆がざわついていた。
営業に配属されると信じて疑っていなかった彼女自身も、かなり動揺しているようだ。
「お前はこっちだ、付いて来い」
ん?聞こえてないのか?
「何してる!早く来い!」
ああ、小走りがかわいい。
部屋に入ってソファーに座るよう促すが、何故か彼女は動かない。
「ブラインドタッチはできる?」
俺の質問に意識を取り戻したらしい彼女が、否定と共に首を振る。
かわいい。
ソファーに移動してパソコンを起動させ、タイピング練習用のソフトを開く。
「とりあえず、これで練習して」
一度見本を見せてから、俺の隣に座るよう呼び寄せて、実際にやってみるように促す。
緊張してるのか、指を震わせながら懸命にタイピングをする彼女は、抱きしめたくなる程のかわいさだ。
手を出しては駄目だ、犯罪だ。
理性を総動員させ、じっと彼女を見守る。
いつまでも見ていられる気がした。
駄目だ、いい匂いがする、耐えられない。
これ以上そばにいるのは危険と判断して、自分のデスクに戻った。
仕事を進めながらチラチラ彼女を見ているが、凄まじい集中力だ。
そろそろ昼が過ぎるというのに、ずっと練習を続けていて、もうタイピングは習得しているように見える。
声を掛けづらいが、このままというわけにもいかないので、立ち上がって声を掛けた。
「昼めしに行く」
余程集中していたのだろう、一息ついてリラックスした雰囲気の彼女もかわいいが、、
「早くしろ、置いてくぞ」
*
会社のそばにある創作イタリアンの店は、少し値は張るが間違いなく美味しいと評判なので、昨日の内に予約しておいたのだ。
昨日の俺に賛辞を贈ろう。
最初は半ば嫌々付いてきている感じだった彼女だが、蟹味噌のパスタを一口食べた途端、なんとも言えない表情で、なんていうかもう幸せが溢れだした。
夢中でパスタを平らげる彼女を、ずっと見ていたい。
俺の分もあげたいくらいだが、多分それは求められていないので、また別の店に連れて行こう。
デザートを食べ終わり、やっと落ち着いた様子の彼女は、面接の時以来となるまっすぐな目線を俺に送ってきた。
ああ、ありがとう、蟹味噌。
そうか、何か足りないと感じていたが、彼女は俺の顔を見ようとしていなかったんだ。
*
その後彼女の様子を注意深く伺ってみると、どうやら彼女は俺に怯えているようだった。
これまで新卒採用をしていなかったこの会社で、俺はかなり若い方だ。
若い俺にやたら舐めた態度で接してくる営業の奴らに、横柄な態度と強い口調で威圧する癖がついていた。
最近は、彼女のことも加わって、常にイライラしていたのも原因のひとつだろう。
彼女は主に営業部で研修を受けていたのだ。
横柄で威圧的でいつも不機嫌な俺のことを、彼女が怖いと感じたのは当たり前だった。
だからと言って、彼女を手放すつもりはさらさらない。
これからは常に一緒に過ごすのだから、焦る必要もない。
彼女が警戒を解くまでは、むやみに接近せず、様子を伺うことに徹することにした。
その間にパソコンに慣れさせて、問題なく書類作成できるようになってもらえば一石二鳥だな。
少し距離を取り、様子を見守る。
すると彼女はみるみるパソコンスキルを習得し、独自に秘書検定の勉強もしているようで、数週間で見違える程秘書らしくなってきた。
これは想定してた以上の収穫だ。
営業に配属されると信じて疑っていなかった彼女自身も、かなり動揺しているようだ。
「お前はこっちだ、付いて来い」
ん?聞こえてないのか?
「何してる!早く来い!」
ああ、小走りがかわいい。
部屋に入ってソファーに座るよう促すが、何故か彼女は動かない。
「ブラインドタッチはできる?」
俺の質問に意識を取り戻したらしい彼女が、否定と共に首を振る。
かわいい。
ソファーに移動してパソコンを起動させ、タイピング練習用のソフトを開く。
「とりあえず、これで練習して」
一度見本を見せてから、俺の隣に座るよう呼び寄せて、実際にやってみるように促す。
緊張してるのか、指を震わせながら懸命にタイピングをする彼女は、抱きしめたくなる程のかわいさだ。
手を出しては駄目だ、犯罪だ。
理性を総動員させ、じっと彼女を見守る。
いつまでも見ていられる気がした。
駄目だ、いい匂いがする、耐えられない。
これ以上そばにいるのは危険と判断して、自分のデスクに戻った。
仕事を進めながらチラチラ彼女を見ているが、凄まじい集中力だ。
そろそろ昼が過ぎるというのに、ずっと練習を続けていて、もうタイピングは習得しているように見える。
声を掛けづらいが、このままというわけにもいかないので、立ち上がって声を掛けた。
「昼めしに行く」
余程集中していたのだろう、一息ついてリラックスした雰囲気の彼女もかわいいが、、
「早くしろ、置いてくぞ」
*
会社のそばにある創作イタリアンの店は、少し値は張るが間違いなく美味しいと評判なので、昨日の内に予約しておいたのだ。
昨日の俺に賛辞を贈ろう。
最初は半ば嫌々付いてきている感じだった彼女だが、蟹味噌のパスタを一口食べた途端、なんとも言えない表情で、なんていうかもう幸せが溢れだした。
夢中でパスタを平らげる彼女を、ずっと見ていたい。
俺の分もあげたいくらいだが、多分それは求められていないので、また別の店に連れて行こう。
デザートを食べ終わり、やっと落ち着いた様子の彼女は、面接の時以来となるまっすぐな目線を俺に送ってきた。
ああ、ありがとう、蟹味噌。
そうか、何か足りないと感じていたが、彼女は俺の顔を見ようとしていなかったんだ。
*
その後彼女の様子を注意深く伺ってみると、どうやら彼女は俺に怯えているようだった。
これまで新卒採用をしていなかったこの会社で、俺はかなり若い方だ。
若い俺にやたら舐めた態度で接してくる営業の奴らに、横柄な態度と強い口調で威圧する癖がついていた。
最近は、彼女のことも加わって、常にイライラしていたのも原因のひとつだろう。
彼女は主に営業部で研修を受けていたのだ。
横柄で威圧的でいつも不機嫌な俺のことを、彼女が怖いと感じたのは当たり前だった。
だからと言って、彼女を手放すつもりはさらさらない。
これからは常に一緒に過ごすのだから、焦る必要もない。
彼女が警戒を解くまでは、むやみに接近せず、様子を伺うことに徹することにした。
その間にパソコンに慣れさせて、問題なく書類作成できるようになってもらえば一石二鳥だな。
少し距離を取り、様子を見守る。
すると彼女はみるみるパソコンスキルを習得し、独自に秘書検定の勉強もしているようで、数週間で見違える程秘書らしくなってきた。
これは想定してた以上の収穫だ。