保健室へ行く前に外の蛇口で傷口を洗って、また支えてもらいながら校舎内まで来ると、さっきまで寒さで痛みもあまりなかった傷口が急に熱をもったように感じた。


「失礼します」


開けっ放しの保健室の扉をくぐり、星野くんが声を張り上げる。

わ、声大きいな…、さすが運動部だ。


「あれ、めずらしい、怪我?」

「自分じゃなくて、長沼さんです」


保健室の毒島(ぶすじま)先生は五十代の優しそうな女の先生。

星野くんが現れたことに驚いていたけど、わたしの姿を見ると納得したように頷いて、「そこ座ってね」とソファを指さした


「名前とクラスと、出席番号教えてくれるかな」

「はい、一年二組、十七番、長沼橙子(とうこ)です」

「はーい、長沼橙子さんね、転んじゃったかな?」


先生はノートのようなものにいま伝えたことをすらすらと書き込みながら、傷の様子を確認するようにわたしをじっと見つめる


「はい、えっと、正門のところで人とぶつかってしまって、その拍子に」

「うひゃー、痛かったでしょ?傷は…、手と膝ね。洗ってきてくれたんだね、他に痛いところはない?」

「ないです」


先生はニコッと笑うとテキパキと応急処置を施してくれた。