はあ〜、と深いため息をついてダイゴローを抱えると、リビングのソファにどっかりと腰を下ろした。


「あ、橙子おかえり〜」


「わー!!」


リビングの奥から急に声をかけられて、思わず大きな声を上げる。

大袈裟なくらい身体をビクッと跳ねさせたわたしを見て、その声の主であるお母さんは呆れたように笑っていた


ずっと静かだったしまさかいるとは思わなかった


「か、買い物行ってるのかと思ってた」

「えー?お母さん今日はずっと家にいたよ」


え、じゃあわたしが、帰った時からずっといる…?


じゃ、じゃあまさか、さっきダイゴローに話しかけていたの聞かれたんじゃ…


「あの、お母さん、さっきわたしがダイゴローに話しかけてたの、聞いてた…?」


「“好きな人できちゃったよ〜”ってやつ?? お母さんも詳しく知りたいなあ、どんな子?金曜日に話してた子?」


…うわ、最悪だ。


キラキラした目のお母さんは放っておいて、ため息をつきながら項垂れると、スマホがブッと震えた

…なんだろ


画面を見ると、ポップアップ通知には“聖也”の文字。


えっ


《星野聖也です、よろしく!昼間のは和田が全面的に悪いから気にしなくていいよ 笑》


まさか、と慌ててトークの画面を開くと、さっき何度も見返した文章は星野くんに送信されていた。


…お母さんに声をかけられた時に、送信ボタン押してたんだ…。


で、でも、星野くんから返事きた!

結果オーライ…かも


またバイブの音がして、画面を見る。


《嫌な気持ちにさせてごめんね》


なんで、星野くんってこんなに優しいんだろう。