星野くんのもとへ行くだけなのに、そこまでの距離がすごく長く感じた

やっとの思いで星野くんのところまで来ると、ひとつ咳払いして平静を装って微笑む。


「えと、どうしたの?」

「ごめんね、急に来て。ほら、こいつ」


星野くんにぐいっと引っ張られて現れたのは、…確か、…和田くん、だった。

彼を見た瞬間に、表情が少し強張ってしまったのは、ゆるしてほしい。


「あ、この前の」

「…………」


わたしは思わず声をあげてしまったけれど、和田くんはむすっとしてて無言だ。


やっぱり、この人とはウマが合わないと思う。


海よりは少し小さいけれど、背が高いからか、155センチしかないわたしは、当然のように見下ろされる。でもこの人の視線は、見下ろすって言うより見下すのほうが正しい気が…。


わたしを見るあの鋭い瞳は、睨まれているみたいで落ち着かない。


わたしたちの間に不穏な空気が流れているのを察してくれたのか、星野くんが少し話をしてくれる


「そういえば、怪我したところ、大丈夫?」


こてん、と首をかしげる星野くんは、この世のものとは思えないほど可愛い。

え、待ってその仕草、たぶん女子のわたしがやっても可愛くならない。


「うん! 大丈夫、もうどこも痛くないし!」


うそ、本当はまだ膝は痛い。今日も歩く時にスカートが当たって痛かったからタイツを履いてきたくらいにはまだ痛い。


だけど、星野くんが「よかった」って笑ってくれたから、やっぱり痛みなんか吹き飛んでしまった


星野くんが笑顔になると、嬉しいな


「はあ、もう痛くねぇんだったら、おれここに来る必要あった?」


それなのに、たった一言でわたしの幸せな気持ちを壊したのは、和田くんだった


何この人…どういう意味?


キッと和田くんを睨むと、和田くんもわたしを睨んでくる。