お昼休みになり、約束通り包み隠さずすべて、あの日のことを話し終えると、景ちゃんはキラキラした瞳でわたしの右手を両手で包むように握ってくる。


「橙子にもついに春が来たね!!もう冬だけど」


教室全体に響くような大きな声に、わたしは慌てて景ちゃんの口を左手でおさえた


「わー!! 景ちゃん、シー!!声がでかい!」


当然、わたしたちは一瞬で注目の的になってしまった。


「長沼やっぱあれ彼氏? よかったじゃん」

「橙子ちゃん末永くお幸せにね〜」


仲いい子から、そんなに話したことのない子までわたしのことをからかってくる。


「違うから!本当に違うから!!」


なにこれ、ものすごく恥ずかしい…。


わたしこんなにいじられキャラだっけ…?


わかりやすく落ち込んでいると、景ちゃんの小さな、きゃって声。

今度はなんだろう、と、顔をあげれば、景ちゃんはわたしを見てから教室の扉を指さす。


「へ?」


素直に教室の扉を振り返ると、


星野くんがいた



……この間とは違って、制服姿。うちの学校の紺色のブレザー。深緑色のネクタイが胸元にある。ブレザーの下にはキャメル色のカーディガンを羽織っていた

ちなみに、女子も同色のブレザーで、こちらは胸元に深緑色のリボンタイをつける。


「な、んで、」


わたしと目が合った星野くんは、途端に笑顔を浮かべると「長沼さん!」って片手をあげた。

星野くんのまだ変声期を迎えきっていない声は綺麗で、そしてよく通る。

呼んでる、よね?


ドキドキとうるさく鳴りはじめる心臓に苦しさを覚えながらも、席を立ち上がって、星野くんのもとへと向かった。


クラスメートが何人かにやにやしてる気がするけれど、もうあまり気にしないようにしておく