「長沼さんは自転車通学?」


手当てを終えて、片付けをしながら毒島先生が尋ねてくる。


「えっと、徒歩で」

「おうちは近く?」

「駅方面です、ここからだと20分くらい」

「あら、じゃあ少し遠いんじゃない?大丈夫?帰れそう?もし大変ならおうちの人に連絡しようか?」

「だ、大丈夫です、歩けます」


お母さんがお父さんのことを駅まで迎えにいってる時間だろうから、こんなことで二人に迷惑かけたくなくて首をぶんぶんと横に振る。

毒島先生は少し心配そうにしてたけど、わたしが何度も大丈夫ですと笑っていたせいか、「気をつけて帰ってね」と微笑んでくれた


「長沼さん、本当に帰れそう?」


保健室を出て玄関まで来ると、星野くんまでもが、靴を履き替えながら心配してくれる。


「だ、大丈夫!です!」


思わず大きくなったわたしの声に星野くんはびっくりした様子で、でも、と続ける。


「暗いし送っていくよ」

「えっ!?だ、だだ大丈夫です!それに、もう暗いし」

「いやいや、俺も駅方面だし送らせて」


多少強引な気がするけど、星野くんに完全に惚れてしまったわたしは頷くしかできなかった。