「なんでついてくるの」
「だって僕はハルだもん」
猫耳男子は教室までついてきた。彼はほかの人には見えないようだ。だから変に思われないように、わたしは彼に小さな声で話しかける。
「わかったから机の上から降りてくれないかな。目の前にいられたら邪魔なんだけど」
「あ!そっか。ごめんメル」
机から降りてくれたのはいいが、背後に立たれたら気になってしまって授業に集中できない。
「じゃあ長坂。この方程式を解いてみろ」
「は、はい?」
「なんだよ。俺の話しを聞いていなかったのか?」
「すみません」
数学の坂田先生は担任でもあった。優しい人だ。個人的な悩みを打ち明けたこともある。
「ふうん。学校ってこんな感じなんだ」
「…」
「メルから聞いてたけどいっぱい人がいるんだね」
「しぃっ!黙っててよハル」
後ろから話しかけてくるハルにイライラして、つい大きな声を出してしまった。坂田先生と目が合った。まずいぞ。
「なんだ長坂。どうかしたのか」
「いえ!な、なんでもありません」
「そうか。体調が悪いのならすぐに言いなさい」
「はい。大丈夫です」
必死でごまかす。まさか見えない男の子がいるだなんて言えないもの。
しかし本当にこの子はハルなのかな。質問にぜんぶ答えたら信じるって約束した。でも。
なんで?どうして?疑問ばかりが次々に湧いてくる。
「なぜ男の子になって空から落ちてきたの?」放課後、家に帰る道すがら、横を歩いているハルに聞いてみる。黒い耳がピクピク動くのがかわいい。
「僕が神さまにお願いしたから」
「神さまに?」
「うん。メルが悩んでいるから励ましたいってお願いしたんだ」
「…神さまってどんな人?」
おいおい聞くべきなのはそこじゃないだろう!それにだいたい質問が変だ。神さまなんだから人じゃないし。すると…
「いい人だよ」ハルの答えも変だった。
「僕には何もできない。そばにいることしかできないけど、メルを励ましたいと思って」
「そっか。ありがとう」
「どういたしまして」
わたしの悩みは坂田先生にも話した。悩みとは自分の将来のことだ。自分がどうしたいのか何になりたいのか、未来のビジョンが描けなかった。このまま何となくみんなと同じようにどこかの大学を受験してなんとなく勉強して、どこかに就職するかな。でもそんな未来に興味がわかない。
興味があるのは小説を書くことだった。できるならプロになりたい。しかしそれは大それた野望だ。
坂田先生は、わたしの話しを聞いてこう言ってくれた。
「長坂の好きにすればいいと思うぞ。好きなことを全力でやれ。自分のやりたいこと、その目標へ向かって全力で取り組め」
全力でねえ。でも小説コンテストにエントリーしても入賞すらしないよ。夢にかすりもしない。
「わたしには才能がないのかも。ねえどう思うハル。なんてハルに聞いても仕方がないよね」
「そうだね。ところで小説ってなんだい」
ガクッ。そっか。そうだよね。猫なんだから。ハルに教えてあげよう。
「小説はね。物語を文章にするんだよ。文字にして人に読んでもらう」
「ふうん。文字ってなに」
再び、ガクッとずっこける。そこから教えなくちゃいけないの?
「だって僕はハルだもん」
猫耳男子は教室までついてきた。彼はほかの人には見えないようだ。だから変に思われないように、わたしは彼に小さな声で話しかける。
「わかったから机の上から降りてくれないかな。目の前にいられたら邪魔なんだけど」
「あ!そっか。ごめんメル」
机から降りてくれたのはいいが、背後に立たれたら気になってしまって授業に集中できない。
「じゃあ長坂。この方程式を解いてみろ」
「は、はい?」
「なんだよ。俺の話しを聞いていなかったのか?」
「すみません」
数学の坂田先生は担任でもあった。優しい人だ。個人的な悩みを打ち明けたこともある。
「ふうん。学校ってこんな感じなんだ」
「…」
「メルから聞いてたけどいっぱい人がいるんだね」
「しぃっ!黙っててよハル」
後ろから話しかけてくるハルにイライラして、つい大きな声を出してしまった。坂田先生と目が合った。まずいぞ。
「なんだ長坂。どうかしたのか」
「いえ!な、なんでもありません」
「そうか。体調が悪いのならすぐに言いなさい」
「はい。大丈夫です」
必死でごまかす。まさか見えない男の子がいるだなんて言えないもの。
しかし本当にこの子はハルなのかな。質問にぜんぶ答えたら信じるって約束した。でも。
なんで?どうして?疑問ばかりが次々に湧いてくる。
「なぜ男の子になって空から落ちてきたの?」放課後、家に帰る道すがら、横を歩いているハルに聞いてみる。黒い耳がピクピク動くのがかわいい。
「僕が神さまにお願いしたから」
「神さまに?」
「うん。メルが悩んでいるから励ましたいってお願いしたんだ」
「…神さまってどんな人?」
おいおい聞くべきなのはそこじゃないだろう!それにだいたい質問が変だ。神さまなんだから人じゃないし。すると…
「いい人だよ」ハルの答えも変だった。
「僕には何もできない。そばにいることしかできないけど、メルを励ましたいと思って」
「そっか。ありがとう」
「どういたしまして」
わたしの悩みは坂田先生にも話した。悩みとは自分の将来のことだ。自分がどうしたいのか何になりたいのか、未来のビジョンが描けなかった。このまま何となくみんなと同じようにどこかの大学を受験してなんとなく勉強して、どこかに就職するかな。でもそんな未来に興味がわかない。
興味があるのは小説を書くことだった。できるならプロになりたい。しかしそれは大それた野望だ。
坂田先生は、わたしの話しを聞いてこう言ってくれた。
「長坂の好きにすればいいと思うぞ。好きなことを全力でやれ。自分のやりたいこと、その目標へ向かって全力で取り組め」
全力でねえ。でも小説コンテストにエントリーしても入賞すらしないよ。夢にかすりもしない。
「わたしには才能がないのかも。ねえどう思うハル。なんてハルに聞いても仕方がないよね」
「そうだね。ところで小説ってなんだい」
ガクッ。そっか。そうだよね。猫なんだから。ハルに教えてあげよう。
「小説はね。物語を文章にするんだよ。文字にして人に読んでもらう」
「ふうん。文字ってなに」
再び、ガクッとずっこける。そこから教えなくちゃいけないの?