「何見るの〜?」
「あ、先に俺が見たいところ行って良い?」
うん!いいよ〜と頷いて伊吹くんの後について行っていると、
制服をきた女の子が2人こちらを見ているような...
「...だよね?絶対そうだよね?」
「...間違いないと思う。声かけてみる?」
私にははっきりそう聞こえた。
あ、まずい。
本人かどうか確認するのに必死なようで
幸い、一緒にいる私にはまだ気づいていない様子。
私はすぐさま伊吹くんと距離をとり、
伊吹くんとは別の陳列棚を曲がった。
「IBUKIくんですか?」
「きゃーやっぱり!!」
「写真撮ってもらえませんか!??」
「本物!!めちゃくちゃ応援してます!」
「今度ライブいきます!」
2列先の棚から
姿は見えないけれど聞こえる声。
「ありがとうございます。プライベートなので写真はすみません。握手なら。」
真摯に対応する伊吹くんの声。
もし隣にいるときに声をかけられていたら。
写真を撮られていたら。
そう思うと冷や汗が止まらない。
芸能人との恋愛の厳しさを実感した
初めての出来事だった。