伊吹くんの腕の中で目が覚める。



「あ、起きた。おはよ。」



寝起きの少し籠った声が耳元から聞こえて横を見ると、
こちらを見ている伊吹くん。



「体きついでしょ?今日外デート行けそう?」



そう言われれば、
何となくいろんなところが痛いような。



「行きたい!楽しみにしてたから。
でも、大丈夫なの?外に出て...」




「見つからないようにしないとだねぇ、
俺らのファンの子観察力すげーから笑
ちゃんと顔隠してく!」



「今日の凛花さんのコーディネート見てから
俺、服決めよーかな〜。一緒に準備しよ!」



2人で洗面所に立って歯磨きしたりヘアセットしたり、
そんな何気ない時間にもとてつもなく幸せを感じて


もしも一緒に住めたなら...


とつい考えてしまう一方で、
やっぱりそんなこと簡単にはできない、



私たちは単なる普通のカップルではない、という現実が浮かぶ。


これがどれだけ大変なことか
この時の私はまだちゃんと分かっていなかった。