外で待機して30分。
時間が過ぎるのが長く感じる。
ライブ前くらい緊張してるんじゃないか?俺。
咲さんからのGoサインはまだない。
もう会えないのかな...
そう思ったら居ても立っても居られなくなって
気づいたら2人のいる個室の前まで来ていた。
入ろうかどうしようか迷っていたときに聞こえた
凛花さんの震える声。
「..............出会わなければよかった.........」
出会わなければよかった。
そう聞こえた瞬間今まで意気込んでた俺の気持ちが
ぎゅっとしぼんでしまったのが自分でもわかった。
そんなに苦しい思いをさせているのなら
身を引いた方が良いんじゃないか。
凛花さんを想うなら、そうするべきなんじゃないかって。
諦めて帰ろうとする俺の耳に確かに聴こえてきた声。
「嘘、本当は...できることなら、まだ伊吹くんと電話したり、お出かけしたりたくさんしたかった。だって好きだもん。今だって、忘れようって思って気持ち抑え込めたって思ってたのに...」
....まじ?
それが凛花さんの本心なの?
それなら俺もう逃さないよ?
咲さんの
「伊吹にちゃんと伝えなきゃ。」
に対して確かに凛花さんは
「うん、わかってる。」
と返事をした。
やっぱり決めた。
俺は諦めない。
トントン
個室のドアをノックする。
ずっと会いたかったその人は
涙を浮かべた瞳をこちらに向けて
目を丸くしている。
その姿を見て俺は咄嗟に
「凛花さん。ちゃんと伝わったよ。」
そう言葉にして凛花さんを抱きしめた。