「伊吹だってさ、たぶん言わなきゃっては思ってたと思うの。けどやっぱ、...なんて言うの?アイドルですって言われたらやっぱり見方変わるじゃない?」


「世間一般的にはアイドルって知ったらそれに漬け込んで寄ってくるとかあるわけよ。もちろん凛花がそういう人じゃないっていうのは十分彼も私も分かってる。凛花はそんなことはしない。でも、逆に一線引いちゃうってたぶん分かってたから。だから言えなかったんじゃないかな。」


「凛花、もう関わらない。って決めてるでしょ?あたしの読みははずれた?笑」


...読まれてる。


「...もう...とにかく苦しくって。アイドルだって知る前に伊吹くんのこと好きなんだって気づいたけど。私にはどうにもできない。釣り合わない。伊吹くんと付き合ってる自分も、伊吹くんとの未来も想像できないの。」


「こんなに苦しいなら出会わなければよかった...伊吹くんのことなんてもう...好きなんかじゃ...」



咲に聞いてもらっていたら勝手に流れてきた涙


それと同時に考えないようにしていた、
私の本音が。口から勝手に流れてく。

「嘘、本当は...できることなら、まだ伊吹くんと電話したり、お出かけしたりたくさんしたかった。だって好きだもん。今だって、忘れようって思って気持ち抑え込めたって思ってたのに...」



「そっかそっか。凛花が考えてることも、今の気持ちもちゃんと伊吹に伝えなきゃ。」


咲の言う通り。
勝手に自分で決めて、一方的に連絡断つなんて
失礼だよね。


「うん、わかってる。」



トントン


個室のドアから音がして。


深く帽子を被った男の人が入ってきた。
「凛花さん。ちゃんと伝わったよ。」


そう言うと帽子を取ったその人は私をきつく抱きしめる。


え???
伊吹...くん??



「伊吹、あたしが来ていいっていってからって言ったでしょ!!勝手に話を聞くな!」


呆れた顔で言う咲。

「今日はあたしが凛花と話したいっていうのもあったんだけど伊吹から凛花に会わせてほしいってお願いされてて。凛花と話してみて呼べる状態だったら...って話だったの。それなのにあんたは勝手に。」


「すいません咲さん。どうしても俺の気持ちは伝えなきゃって思って来てしまいました...」



「もう〜貸し1ね。あと、今日あたしが食べた分はあんたの奢りだから笑 ちゃんと2人ではなしなよ。」


そう言って部屋を出て行こうとする咲。


「え、咲...帰っちゃうの?」


「今日はそのつもりだったから。またちゃんと2人で飲もうね!」



そういうと咲は出ていった。


伊吹くんはパッと私から離れると、


「いきなりすみません。」と言い、さっきまで咲がいたテーブルの向こう側へ座った。


少しの沈黙のあと、伊吹くんが話しだした。