「きりーつ、れい」


やる気なさげな週番の号令に合わせて、挨拶。
正直なところ、こんなのは形だけ。前に立つ先生ですら、やる気があるようには見えない。


「みんなおはよう。
…突然だけど、斎藤が交通事故に遭って入院することになった。」


突然の発表に、一気にクラスがざわめく。
斎藤というのは うちのクラスの男の子。
いたって真面目で、平凡。
少し存在感が薄いけど、誰にでも親切で、いい人。


「幸いなことに命に別状はないらしいんだけど、1カ月ぐらい入院するらしい。
…ただ、その間 男子の委員長が不在になるんで、代理を決めなきゃいけなくなった。
さすがに佐藤だけじゃまずいからな。」


…そう。実はあたし、委員長。
と言っても、推薦で決まった斎藤くんとは違って、あたしはじゃんけんで決まったんだけど。


「…ということで、時間もないし、クジで決めようと思う。」


担任である村井の発言に、一斉に「えー!?」と不満をもらす男子たち。
委員長なんてめんどくさいこと、誰もやりたくないに決まってる。

嫌がる男子たちを尻目に、関係のない女子たちは無反応。
―ただ1人、あたしを除いて。

その人が仕事をしてくれるかどうかで、あたしの運命は変わるのだから。


「じゃあー…今委員会に入ってない奴 前に来い!
えっと…飯田、大野、谷本、野口、浜田、森、渡辺ー…あと誰かいたっけ?」

「せんせー、行成忘れてるよ!」

「渉!余計なこと言ってんじゃねー!!」


2人の発言に、クラスメイトたちが笑う。
(渉は既に体育委員だから、完全に他人事。)


「おー、悪い悪い。佐藤もだったな。吉崎ありがとう。」


呑気に言った担任は、いつまでも動こうとしないアイツを促した。
しぶしぶ席を立つ姿を横目で見て、あたしは気づく。


――『仕事してくれる人がいい』とか、そんなこと考えてる場合じゃないということに。


だって、アイツが委員長になったら、イヤでも関わらなきゃいけなくなる。
そんなの、絶対イヤ。無理。ありえない。



…この際、仕事してくれなくても何でもいいから!!
神様!どうかアイツじゃありませんよーに!!!!!