アスター王子の鋭いひと言は、わたしの胸に深く突き刺さる。

確かに今回トーナメントに参加したわたしより年上の従騎士には、間もなく騎士に叙される人も何人かいた。無論、対戦した時はずいぶん手こずって、すべて辛勝だった記憶がある。騎士に叙任されるならば優勝を狙っていたろうに、申し訳ないけれど、全力で戦って勝たせていただいた。

(確かに……わたしがこの優勝の価値を否定しまったら、彼らの実力は騎士に相応しくないと否定することになる……ひいては、彼らの今までの鍛錬や努力……積み上げてきたものを否定することになってしまうんだ)

わたしよりはるか幼いころから小姓として騎士に仕え、長年勤めた上で従騎士となり騎士を目指してきた彼ら。その十数年を、わたしが否定できるはずもない。

まだまだ若輩者のわたしが名乗るのは……烏滸がましいかもしれない。
けれども、わたしは現実にこの馬上槍試合で正々堂々と優勝をした。なんの贔屓もなしに、自分自身の全力で。

「自信を持て、ミリィ。おまえはとうに騎士に優勝相応しい力技と清廉潔白かつ高潔な精神を備えている。まだまだ足りないというならば、騎士になった上でさらに上を……より高みを目指せ」

アスター王子にそう告げられて、覚悟は決まった。

左胸に手を当てて拝礼をしたわたしは、こう告げた。

「騎士叙任の栄誉を、謹んでお受けいたします」

わあっ!と、周囲から最高の歓声が上がった。

新しい女性騎士の誕生が決まった瞬間だった。

そして、その後吉報が届く。
ソニア妃が無事に男児を出産。20数年ぶりに誕生した第4王子はアスタークと名付けられた。