そして、従騎士の正装の胸に勲章が輝く。

その感動に浸る間もなく、アスター王子の口から予想外の発表がなされた。


「ミリュエール・フォン・エストアール」
「はい」
「そなたを、16の誕生日に騎士に叙任しよう」
「……!!」

まさか、と思っていた。
最近アスター王子が国王陛下やお父様と度々なにか相談なされていた事は知っていた。
でも、それは……。

わたしにはまだ早い、と今ここでは反論できない。公の場では王太子殿下に逆らうわけにはいかないから。
軽く彼を睨みつけると、アスター王子は悪戯が成功したような、いたずらっ子のような笑み。……やってくれましたね、まったく。


「……まだ早い、自分自身が未熟と言いたいのはわかる」

わたしがいつも叙任を辞退する理由を、アスター王子はすぐに被せてくる。さすがにわたしのことをよく理解してらっしゃいますよね。

「だが、この馬上槍試合で見事に優勝した……つまりは、従騎士のなかで一番の実力者であることが証明されたのだ。これ以上ない証ではないか?」

そう言われてしまっては、確かに反論はできない。
そうだった。伝統的に、馬上槍試合を優勝した従騎士は、その年に騎士に叙任されるのが慣例になっていたんだ。

「優勝したのにまだ自分自身が騎士に相応しくない……と尚も言うならば、ひいてはこのトーナメントに参加した従騎士はさらに騎士に相応しくないのだということになる。間もなく騎士に叙任予定の従騎士もな」