「従騎士馬上槍試合トーナメント優勝者、ミリュエール・フォン・エストアール。前へ」
「はい!」


馬上槍試合トーナメントの表彰式。

トーナメント会場に設けられた壇上を上がれるのは、優勝者と表彰者のみ。名前を呼ばれて従騎士の正装をしたわたしは、壇上に上がるため一歩一歩を踏みしめながら思い出す。

幼いころ、騎士に憧れて真似事をしたこと。
読む本も男の子向けばかりで、お母様に少し呆れられたこと。
花嫁修業は逃げてばかりで、地元の騎士に弟子入りの真似事をしたこと。
初めて見た、お父様の馬上槍試合。あれが、騎士を目指すきっかけだった。

弟が生まれなくて……わたしがエストアール家を継ぐんだ、と決意した寒い日の夜。

レスター王子に目をつけられ強引に婚約者にされたあと、王宮で過ごす無意味な日々。つまらなくて、抜け出して訓練に明け暮れた。そこで知り合ったのが親友のフランクス。

彼とは切磋琢磨しあう唯一無二の親友になれたんだ。

レスター王子のわがままで婚約破棄され……騎士を目指すと決めた日。お父様に認めて貰うため必死だった。

アスター王子の従騎士になって、奮闘した日々。
人よりスタートが遅かった……そして女という負い目から、とにかく限界以上に努力することを自分自身に課した。
筋力がないことに悩み、それをカバーするためただがむしゃらに努力してきた。