試合前に、ピッツァさんはこう言ってた。

“今まで女騎士は馬上槍試合で優勝はできなかったが、これはチャンスだ。女でも変わらずにやれるって、男どもに見せてやるさ!”

彼女は言葉通りに、有言実行を果たしたんだ。

馬上槍試合史上初の女性騎士の優勝。ゼイレーム建国以来の快挙は、その重みは、きっとわたしが考える以上のものがあるだろう。

「はい……きっと。ピッツァさんの活躍は、新しく騎士を目指す女性にも、いい励みになると思います。もちろん、わたしも勇気づけられました」
「あはははは!そうか、そりゃあよかった!でもよ」

ピッツァさんがチラッと目配せしてくる。はて?と不思議に思ってそちらを見れば、まだ10歳前後だろう少女が一人キラキラした目でこちらを見上げてきてた。

仕立てのいいワンピースを着て髪を結い上げているから、少なくとも裕福な平民以上の娘さんだろう。王宮の行事(イベント)だから、身分確かな人間しかこの場にはいない。

「すごい…!騎士って、あ、あたしでもなれますか?」

両手をぎゅっと握りしめ、期待に満ちた目でこちらを見上げる。すると、ピッツァさんはニカッと笑い、彼女の頭を撫でる。

「ああ、もちろんさ!このミリィも騎士を目指したのは去年からだからな。まあ、基礎はあったが…頑張りゃ女でもやれるんだ。アタシとミリィみてえにな」
「あ……ありがとうございます!あたし、ずっと憧れていたんです。でも、女だから…って花嫁修業ばかり……一度、お父様に話してみます!」
「おう、頑張れ!困った時は遠慮なくこのピッツァ様に相談しな!」

さすがに面倒見が良いピッツァさん。ガハハハ!と、彼女の豪放磊落な笑い声が響きわたった。