騎士による馬上槍試合決勝戦の勝敗は決した。

笛が高々と鳴り響き、勝者の紋章旗が掲げられる。

ライト伯爵家の、剣と斧が薔薇とともにデザインされた紋章旗だ。

優勝者は、ピッツァ・ライト。

ゼイレーム王国で初めて、女性騎士として馬上槍試合を優勝したんだ。


「ピッツァさん、優勝おめでとうございます!」


思わず駆けつけたわたしは、馬上で兜を脱ぎ大きく息を吐いたピッツァさんにお祝いの言葉をかける。汗まみれでも彼女は呼吸ひとつ乱れていない。体力と持続力がケタ違いなんだ。

「ああ、あんがとよ。ま、今回は最初から自信はあったからな〜」

得意げに胸を張る彼女に、戻って兜を脱いだアスター王子が苦笑い。

「確かにな。今回のピッツァはずいぶんいつもと手応えが違った。相当厳しい鍛錬を重ねたんだろう。オレも、負けるつもりはなかったが」
「まぁ、負けは負けですからねーでも、アスター王子も素晴らしい試合でしたよ。お疲れ様です」

アスター王子にぐさっととどめを刺すと、彼は胸を押さえて体を前かがみにする。

「……い、今のは……地味にダメージを受けた……ぐっ」
「あはははははは!まぁ、単にアタシが強かったってなだけだからな。気にすんな!」

ピッツァさんはバンバン!とめちゃくちゃ派手な音でアスター王子の背中を叩いていますが、鎧越しでもダメージを受けるって……どれだけ馬鹿力なんだろう。

それはともかく、ピッツァさんはわたしにぐっと親指を立てる。

「よし、ミリィ。これで証明できたな」