まずは、ピッツァさんのターン。
黒馬に跨った彼女は派手な紅いフルプレートアーマーを身に着け、自慢のブラックソードと同じ黒いランスを手にしている。対するアスター王子はシンプルにシルバーのフルプレートアーマーで、ランスもごく普通の鋼色。馬の全身を飾る装飾も、ピッツァさんはフリフリの極彩色だ。

(あ……!)

会場の中央を仕切る塀越しに2人がすれ違う手前、ピッツァさんはものすごい速さでランスチャージを繰り出した。パワーあふれるそれは、並の騎士ならばそれを受けただけで落馬してしまうだろう。

けれども、さすがにアスター王子は一筋縄でいかない。ランスチャージを読み切った上で受け流し、そのまま弾いた。

ランス同士が激しくぶつかる音が、こちらまで響いてくる。

1ターン目はそのまますれ違う。

次は、アスター王子のターン。

両手を握りしめていると、手汗まで滲んでくる。

両者ともに馬を引き返し、再び相対すべく塀沿いに走らせる。

今までのパターンだと、アスター王子はランスを狙う可能性が高いけれども……ピッツァさんが相手だと、たぶんそうはいかない。彼女のパワーは相当だ。並の男騎士よりも馬力があるから、力押しは避けた方がいい。
とはいえ、ピッツァさんにも頑張って欲しい。

ドキドキしながら、2人が対戦する姿を見守った。