ランス同士が激しくぶつかる音が響く。
一度ランスを浅く引いたアスター王子は、目に見えぬ速さで相手の盾をかすめた。そのままランスの穂先を引っ掛けると、勢いよく相手が落馬する。

勝利を告げる笛の音とともに、アスター王子の紋章旗が掲げられた。

これで、7戦全勝。
アスター王子は圧倒的な実力で、危なげなく勝ち進んできた。

というか…やはり正規の騎士は実戦を経験した者が多く、従騎士の馬上槍試合とは迫力が段違いだ。観戦しているわたしでさえ、興奮が抑えきれない。

「お、やっぱりアスター勝ち残ってやがるな」

次の試合に出場するであろうフルプレートアーマーに身を包んだピッツァさんが、兜を抱えて嬉しそうに声を弾ませていた。

「はい。今のところ順調みたいです」
「だろうな。ま、次はサクッとアタシが勝てばアスターと決勝だ。前にも言ったとおりに、遠慮なく勝たせてもらうぜ?」
「はい。正々堂々とした勝負ならば構いません。強い人が勝つのは当たり前ですから」

わたしがそう答えると、ピッツァさんはガッハッハ!と豪放磊落な笑い声を上げる。そして、手甲を着けてない右手でわたしの髪の毛をくしゃくしゃにかき混ぜた。

「アハハハ!相変わらず気持ちいいやつだ。あ、それと優勝おめでとーだな」
「ありがとうございます……でも、これはやめてくださいよ」

わたしが抗議すると、ニカッと笑った彼女は、頭をポンと軽く叩いてきた。

「アタシもかわいい後輩のため、スパッと優勝キメてくるかんな!今まで女騎士は馬上槍試合で優勝はできなかったが、これはチャンスだ。女でも変わらずにやれるって、男どもに見せてやるさ!」

そう告げた彼女は、愛馬に跨り颯爽と駆け出した。