(勝負は、一瞬で決まる!)

ランスを握る手に、力が籠もる。

どんな些細な動きも見逃せない。最大限の注意を払いつつ、わたしも作戦を決めた。

フランクスが望むのは、正々堂々とした騎士らしい清廉な勝負。卑怯な手段は使わず、一騎打ちに相応しいもの。

(ならば、フランクス。お互いランスを狙うんだ)

フランクスの先ほどの動作は、デモンストレーション。次のターンで勝負が彼の望みだ。以心伝心。この数年……騎士見習いになってからの1年、彼とは良き親友として互いに切磋琢磨してきた。だからこそ、その考えが理解できる。

だからわたしも正々堂々とフランクスのランスを狙い、勝利を目指すんだ。

(さぁ、フランクス。あなたの全力でわたしを狙うんだ。わたしはそのうえで勝たせてもらう!)

親友だからこそ、わたしは全力で応える。 

アクアの俊足で、勝負の時間は速く訪れる。

ランスを正面に構えたわたしは、すれ違う数秒前からランスを構える。

ドキンドキンと心臓が高鳴り、気分が高揚する。その一方で、冷静な自分もいた。

勝負時がーー見えた。


(……今だ!)

自分自身の直感を信じたタイミングで、ランスチャージ(突撃)を繰り出す。どんな時よりも、速く正確に!

そして……

手応え、あり。


フランクスがランスを動かしたほんの一瞬の差で、彼のランスが折れる。

……勝負の結果を告げる笛が鳴り響き、エストアール家の紋章旗が掲げられた。