いよいよ、従騎士による馬上槍試合の決勝へ。

対戦するのは……誰よりもよく手の内を知る相手、親友のフランクスだ。

これまで辛勝もあったものの、確実に実力で勝ち抜いてきた。

将来、マリア王女が降嫁し彼は国王陛下の義理の息子に……ひいては、アスター王子と結婚するわたしと義理の姉弟になる。
本来裕福な農家の息子だった彼が、男爵家の養子に…ひいてはマリア王女の婚約者となり、公爵家を継ぐことに反発する貴族は多い。その声を黙らせるには、この馬上槍試合で優勝することは必須だろう。

(それはわかってる。親友として彼を応援したい……でも……わたしも、優勝を譲る気持ちはない)

騎士を目指す。シンプルだけど一番の目標であり、最大の夢だ。ならば、正々堂々と対峙し勝敗を決める。

銀色のフルプレートアーマーに身を包んだフランクスは、呼吸を整えているのが遠目に見える。わたしも、全身が武者震いで震えた。

(いよいよ決着を着ける時が来た……)

リハーサルと呼べる模擬戦では、5勝3敗。わたしの方が勝ち越している。だから、どんな手段(て)を使うのか、ランスの扱いはどうか…お互い熟知している。

それでもなお、わたしは勝たせてもらう!

そして、試合のスタートを告げる笛の音が会場いっぱいに鳴り響いた。