「ミリィ、決勝進出おめでとう」

準決勝を勝ち抜いたあと、待機所のテントにアスター王子が再び訪れてくださった。彼はわざわざ手ずから作られたドリンクを渡してくれる。

「ありがとうございます……って、苦!!」

ひょうたんに入った特製ドリンクは冷えていたけれども、ずいぶんとほろ苦くて思わず顔をしかめてしまった。

「これ、一体なにが入ってるんですか?」
「それは、秘密だな。ただ、オレがいつも戦いに赴く前に飲んでいるから、効果は保証できるぞ?」
「……うげ」
「……なんだ、その心底嫌そうな、疑わしそうな目は?」
「あなたが明かせないということは、違法すれすれの怪しげなヤバい材料が入ってるんじゃないですか?」
「そんなことはない!すべてマトモな材料ばかりだ!!」
「そうおっしゃるならば、なにが入ってるかきちんと説明できますよね?」
「ぐっ…」

わたしがにっこり笑ってそう追及すれば、観念したアスター王子はボソボソと小さな声で白状しだしましたよ。

「ケールと、ミントと、カカオと……あとは蜂蜜に……」

挙げられた材料は、どれも苦いものばかり。というか、めちゃくちゃな組み合わせだ。どれも体に良さそうではあるけれども。

でも……
秘伝のドリンクを、アスター王子が多忙な中でわざわざわたしのために作って持ってきてくださった。そのことが何よりも嬉しかった。