ランス同士が激しくぶつかる。そのままランスの穂先が滑り、やり過ごされた。

これを勝てば、次は決勝戦。
数多の従騎士相手に準決勝まで勝ち上がってきた相手だけあり、さすがになかなか隙がない。
2歳上の、騎士叙任間近の従騎士仲間。
実力はほとんど騎士と変わらないんだ。ハッキリ言って、実力はあちらが上。

(それでも…どんな相手だろうと、わたしは負けない。エストアール家の娘として、将来の王妃として)

ぎゅっと手綱を力強く持ち直す。ターンした相手が再び向かい合わせに走り出す。

これで、5戦目だ。
相手も疲れが溜まっているはずだけど、そんな素振りは見せない。

体格は成人男性とほぼ変わらない。落馬を狙うならば、慎重かつ大胆に狙わねば…!

(おそらくランスを狙うのは無理だ)
相手のランスの扱いは巧みで、名人級。下手に手を出せば返り討ちに遭う。ならば。

盾か顎の下か……狙いを定めねば。

こちらもアクアのスピードを調整しながら、慎重に相手を観察する。向こうのターンでは確実に落馬を狙ってくるだろう。そうわかっていたから、すれ違う瞬間にランスで防御。次のターンで、相手の盾を狙うことに決めた。

「アクア行くよ!あなたの脚で相手を戸惑わせるんだ!」
「ブヒッ!」

引き返した瞬間、アクアは猛ダッシュ。すごいスピードで走り抜けると、相手は慌てて対応しようとするけれども…。

ブラフでランスを狙ったと見せかけて、空いた盾を素早く狙う。

(今だ!)

一瞬でランスの穂先を変更し、盾の突起に……届いた。

「はっ!」

スピードに乗せて勢いよくランスを引けば、手応えあり。
相手がそのまま落馬する。

そして、審判により勝利を告げるエストアール家の紋章旗が掲げられた。