「やったな!あと3回勝てば優勝じゃねえか」

休憩のためにテントに戻ると、今度はピッツァさんがレトムとともに激励に来てくれていた。2人は最近いい雰囲気ってほどではないけど、よく一緒にいるのを見る。レトムが頑張っているんだろう。

「ありがとうございます。ピッツァさんも騎士のトーナメントに出場するんですよね?」

脱いだ兜を傍らに置きながら訊ねれば、彼女はニカッと笑う。

「おう、もちろんな!今度こそアスターをブッ倒して優勝だ!悪く思うなよ?」

握りこぶしを振り上げて勇ましく宣言するピッツァさんに、クスリと笑いがこぼれる。

「もちろん。アスター王子が軟弱になっていたらいけませんから、弱いなら徹底的に叩き潰してください」

わたしがそう言えば、彼女はニヤリと笑ってわたしの頭をクシャリと手でかき混ぜた。

「お、さすがミリィだな。話がわかるぜ!」
「騎士ならば、本来の実力で正々堂々と勝負すべきですから」

わたしがこともなげに言うと、レトムが苦笑いをしていた。

「さすがミリィだよな。昔から自分に厳しい姿勢は変わらない」

幼なじみとも言える遠縁の彼とは、幼い頃から度々遊んでもらった。騎士の真似事をする中で、わりと真面目に彼はいろんなことを教えてくれたっけ。

「うん、わたしは昔から騎士を目指すって決めてたから。女性でも騎士になれる…通用するって証明してくれてるピッツァさんたち、先輩騎士はほんとうにすごいし尊敬してるし、憧れるんだ。だから、ピッツァさん、優勝に向けて頑張ってください!」

わたしが素直な気持ちを告げると、ピッツァさんはわたしの背中をバンと叩いた。

「もちろんさ!かわいい後輩のためにも、目指すはてっぺん…優勝しかないからな」