(でも、わたしも負けを譲るつもりはない。一対一の真剣勝負。友人だからこそ、きちんと勝敗を決める!)

トムソンはこちらの癖や思考パターンを知っている。逆を言えば、こちらもトムソンの癖や思考パターンを熟知しているんだ。

(馬がスピードに乗ったとき、トムソンは手綱を軽く引くクセがある)

ほら、今もまた。すれ違い様こちらの行動が失敗したあと、あちらの馬はスピードを速めたけれども、トムソンは無意識に手綱を引いて抑えた。

(トムソンは次に積極的に狙ってくる。おそらく盾や鎧でなくランスを直接狙ってくるはずだ)

彼は自分自身が落馬しまくった経験から、馬上槍試合では対戦相手を落馬させた事はない。とはいえ、それは今までの話だ。今日は年に一度もない、祝賀のトーナメント。彼も様々な作戦を立てているだろう。

「アクア、いい?わたしが合図したら思いっきりダッシュして」
「ブフッ」

アクアは任せろ!と言わんばかりに鼻息を荒くした。
ハッキリ言って、アクア以上の脚の速さの駿馬はいないだろう。
だから、わたしはそれに賭ける事にした。
こちらがスピードを上げれば、トムソンもスピードを上げてくるはず……。

塀の隅で、ターン。再び引き返す時に、アクアをスピードアップさせた。

すると、やはりトムソンも釣られて馬のスピードを上げてきた。