「ボードゲーム…か」
「そうそう。テティスが流行った時に、一緒に遊んだろ?それを思い出せばいい」

騎士をテーマにした一時流行ったボードゲームの名前を出せば、フランクスは「なるほどな」と呟いた。あのボードゲームでも、ひとつの手持ちの駒で一対一の勝負をする場面は何度かある。その駆け引きの面白さでヒットしたんだ。

「確かに、似てるな」

フランクスの声音から、硬さがとれた。テティスはそれこそ、飽きるまでいろんな従騎士仲間と…時には上司である騎士と何百回と遊んだ。もともとは騎士の学習のための学びの遊戯だ。その頃の経験は、決して無駄じゃないはずだ。

「そうだよ。フランクスも、正規の騎士には何度も勝っていたじゃないか。それを思えば、相手は自分と同じ従騎士なんだ。すべて対等な真っ向勝負。気負うことはないさ」

思わず、かつての男言葉で励ませば、フランクスが面頬(めんぼお・顔を保護する可動域)を上げる。その表情に、硬さはなかった。

「そういやあいつには、テティスで一度勝ってたな」
「そうだよ!馬上槍試合は力任せじゃいけない。いかに相手を騙すか、ってところもあるんだ。あと、スピードなら君の方が上だよ。自信を持つんだ」
「サンキュー、ミリィ。やるだけやってみるわ」

晴れやかな笑顔になった親友に、ほっと胸を撫で下ろす。そうだ。フランクスは誰よりも努力してきた。負けるはずないんだ。
その証拠に、彼は以前と戦略を変えて、対戦相手を困惑させる。

見事なランス遣いで正々堂々と勝負し、2勝目を挙げた。その瞬間、嬉しくて飛び跳ねたのは内緒です。