でも、内心感慨深いものがこみ上げる。

去年、国王陛下主催の狩猟会で起きた夢の国事件。
ソニア妃の眠り病の原因となったそれで、かつてアスター王子の双子の弟として生まれるはずだった…アスターク。

ユニコーンの延命のために命を使われ、ユニコーン自身の中にいた彼は…愛情を求める幼い子どもだった。

なんの企みも悪意もなく、ただただ遊び相手を…親の愛情を欲しがっていた。

ユニコーンの渾身の犠牲によりアスタークは生命を返され、ソニア妃の中へ還った。この世界に、再び生を受けるために。

(生まれたら、いっぱい遊ぼうって約束したんだ……やっと約束を果たせるね、アスターク。あなたのためにも、今日は優勝を捧げたい)

次の試合時間が迫り、再び兜を被るために手にする。
すると、アスター王子が真面目な顔でこうおっしゃった。

「アスターク……弟に、やっと会えるな」
「はい」
「……本来ならば、ここにも並んで立っているはずだった」

そこでしばらく沈黙した後に、拳を握りしめてから開いた。


「……弟には、これまで味わえなかった幸せを感じて欲しい。これまでの時間を取り戻してやりたいんだ」

やはり、アスター王子も当事者だけあり思うことはある。血を分けた双子の弟だからこそ、より強く責任を感じるんだろう。本人以上に心を痛めて……彼はそういうひとだ。だからこそ、わたしは…好きなんだ。

「そうですね。だから、わたしも全力で協力します。アスタークとは一緒に遊ぶ約束をしましたからね」

そう告げて、にっこり微笑んだ。