照れ隠しの憮然とした顔をするアスター王子を見つめながら、自分の正直な気持ちを告げた。


「たぶんあの時、ですね。わたしがアスター王子を好きになったのは。不器用だけど誠実で、他人のために一生懸命になれる人だなって」

わたしの言葉を聞いた彼が、わかりやすく顔を真っ赤にしてそっぽを向く。かわいいな、なんて余裕のある気持ちでアスター王子に微笑んで見せた。

「王子だから、と身分に傲らず、並みの騎士以上に自分自身に厳しく他人に優しい。努力を厭わない。眠り病の御母上様のために一人で手を尽くされて……だからこそお助けしたい、と自然に思えました」

わたしが素直に褒めると、アスター王子がそわそわしだした。落ち着きない気持ちが駄々漏れですね。

「あらあら、ごちそうさま…ね」

お母様がクスクスと笑われたからか、アスター王子はますます居心地悪そうに身じろぎする。このところやけに甘い雰囲気を作るから、そのお返しってわけではないけど。なんだかすっきりした。

「あ、そうそう」

お母様が思い出されたように手を軽く叩かれた。

「アスター殿下にもお伝えしますね。ソニア妃殿下が産気づかれましたわ。予定日より少し早いけど“ミリィちゃんの試合が終わるまでにはポーンと産んでおくわねー♪”っておっしゃってましたわ」
「……そうですか。ありがとうございます」

アスター王子は落ちついて聞いてる。うん、ソニア妃なら絶対大安産だろうから、なんにも心配はいらないね。