一旦相手から離れてそのまま走り、ターンして折り返す。


(やはり、相手のランスを砕くのが最善だ)

手応えは悪くなかった。ただ、予想以上のウエイト(体重)と馬術。落馬を狙うと長期戦を覚悟しなければならない。
鎧の顎の下と盾には突起部分があり、ランスの穂先で引っかかれば通常は落馬する。けれど、この相手には通用しない。
ならば、もう一つの勝利条件である、ランスを砕くのがいいだろう。試合用のランスは通常より折れやすくなっている。

「アクア、スピードを上げよう」
「ビヒッ!」

馬術ならば、絶対に負けない自信がある。

相手も同じ考えなのか、スピードを上げてきた。


相手の馬も、いい馬だ。連携もしっかり取れている。信頼関係もしっかり築いているようだ。

けれど、わたしとアクアだって負けない。

再び、ランスを左斜め下で構える。
相手も学習したようで、跳ね上げを警戒してランスを斜め下に構えていた。

(それは予想済みだ)

今まで、死にものぐるいで何千何と練習してきた。1年前まで苦手だったランスの扱いは、アスター王子に太鼓判を押されるくらいになったんだ絶対に、負けない!

こちらから、仕掛ける。


ランスを浅く上げると、相手も突撃の体勢に。案の定無防備になったこちらの盾を狙ってきたから、その瞬間を狙う。

(浅い角度で突く!)

一度引っ込めたランスを、ギリギリのタイミングで再び突き出した。

手応え、あり。

相手のランスの穂先がこちらの盾に届く前に、折れた。