心臓が、どくんどくんと高鳴る。

全身をフルプレートアーマーで覆い、アクアに騎乗したまま手にしたランスを握り直す。

(相手は、わたしと同じ従騎士……不利はない!)

たとえ体格や体重に差があろうと、この馬上槍試合ではあまり意味はない。

やがて合図があり、アクアの横腹を蹴って駆け出した。

(よし…!)

トーナメント場では、広い馬場をいくつかに仕切って馬上槍試合が開催されている。
桟敷席の国王陛下ご臨席のもと、貴族や富豪等の観客が周りで観戦している。

今は、本番である騎士のトーナメント前の前座と言える、見習い騎士・従騎士によるトーナメント。
馬上槍試合には、チョストと呼ばれる個人戦とトゥルネイと呼ばれる団体戦がある。

個人戦は文字通り一対一の戦いだけど、団体戦は騎士が2組に分かれ、多い時は何千人も参加する。
さすがに今回はご婚姻の儀の記念開催なため、怪我人が続出する団体戦は行われない。
ブーフルトと呼ばれる激突戦となると、鎧を身に着けていない団体戦では確実に負傷者が出るからだ。血なまぐさい見世物は結婚式に相応しくない。

とにかく、今は従騎士による個人戦のトーナメント。
中央に塀(チルトバリア)を立てて、馬上で向かい合った騎士が相手を落としたり槍(ランス)を砕けば勝利だ。