「……その話は、今相応しいものではないですね」

メイフュ殿下は少し不貞腐れたように、わずかに眉を寄せられた。ファニイ陛下はクスリと笑い、空気が緩み和やかな雰囲気になる。

それならば、とわたしもアスター王子のエピソードを披露しておいた。

「わたしの上司であり婚約者であるアスター王子も大概ですよ。野営には必須な虫が苦手なんですから」
「……おい」

後ろからなにか聞こえる気がするけど、スルーして続ける。

「わたしが芋虫やカエルをわざわざとって串刺しで焼いて差し上げても、食べようとしなかったんですよ。非常事態の時に食料なんて好き嫌いなんて言えないのに」
「……ミリィ!オレは虫は嫌いじゃない」

なにか抗議が聞こえたから、仕方なく振り向いて差し上げましたよ。

「なんですか?せっかくの貴重な食料を口に突っ込んで差し上げただけで白目剝いたり、絶叫したりするお方」
「あ、あれはだな……突然だったからじゃないか。野営は散々経験している。通常は鳥や魚やうさぎ等を狩るものだぞ?なぜ、わざわざゲテモ…もとい、そういったものを選ぶ?」
「今、ゲテモノとおっしゃっいましたか?貴重な食料に」
「い、言ってない!言ってないぞ、うん」
「そうですか。なら、芋虫もカエルもヘビも今度の野営で召し上がれますよね?」
「……ぐ」