「え、伝説の戦士……ですか?」

アスター王子の意外な発言に気を取られると、メイフュ王太子殿下がフォローしてくださった。

「実は、ファニイ陛下はかつて私の剣の師匠でした」
「メイフュ殿下のお師匠様。でしたら、相当な実力でらっしゃいますね」

わたしがついつい興奮気味に言うと、ファニイ陛下は微苦笑された。

「わたしも、昔は自身の身の上を知らずに傭兵をしてましたから」
「傭兵……」
「はい。我が国は十年前まで、内戦で混沌としていましたから。今でこそ少しは落ち着きましたが…それでもたまにろくでもない野望を抱く者も現れる。メイフュのノイ王国でも、数年前に副王に関わる事件があったのです。その際、彼と今妃になったリリィには活躍してもりいましたが…」

ファニイ陛下の話から、噂程度だけどノイ王国であった事件の話は聞いたことを思い出した。確か、国境付近を治めていた公爵家の夫人による世界を狙ったものだった。

その活躍で、現在王太子妃になられたリリィ様は平民にもかかわらず、公爵の爵位を賜ったんだ。なんとなくだけど彼女には近親感を感じる。

それよりも、ファニイ陛下がメイフュ殿下を呼び捨てされた事が気になった。やっぱり師事すると気安くなるものか…と考えていると、ファニイ陛下が意外なエピソードを披露された。

「かつて、メイフュは反抗期だったからか家出して各地を放浪していたのよ。それで傭兵だったわたしと知り合ったの」