こちらの視線に気付いたのか、2人はさり気なく近づいてくる。そして、曲が終わると女王陛下はこちらへ向けて挨拶をされた。

「ミリュエール嬢ですね…はじめまして。フィアーナのファニイ・フィアーナ・ローズマリンと申します」
「ファニイ陛下、お初にお目にかかります。ミリュエール・フォン・エストアールです」

やはり一国の女王陛下ということで、挨拶はきちんとしなければ…と、淑女の礼をしておいた。
いくら先日の襲撃事件で副王が関わったとはいえ、フィアーナ全体が敵というわけではない。余計な私情は慎むべきだ。

けれども、ファニイ女王陛下は意外なことに、自ら頭を下げられた。

「先日は、わたくしの国の民が愚かなことを……大変申し訳なく思います」
「い、いえ!陛下はなんの責任もありません。むしろ、こちらの怨恨でお騒がせしてしまいました」

突然の謝罪に慌ててそう返したものの、ファニイ女王陛下はそれでも悔やみきれない悔恨の情を滲ませていらっしゃる。

きっと、責任感の強い気性がまっすぐな御方なのだろう。
世界一の大国の女王というお立場にありながら、小国の王太子妃にまでこんな風にお詫びされるなんて。
とはいえ、これ以上謝罪されてはこちらも心苦しい。どう言えば納得してくださるか…と思いあぐねていると、見かねたアスター王子がこう言ってくださった。

「では、我が婚約者に伝説の戦士の剣術を授けていただけますか?」