マリア王女とフランクス。2人はゼイレームの新しい公爵夫人と新公爵として、これで世界に周知された。

なにかあっても、現国王陛下と次の国王であるアスター王太子の後ろ盾があるのだ…とも。

2人は一方的に公爵とされたわけではない。事前に打診があり、散々話し合いを重ねた。

“兄上の汚名を晴らすのは、わらわしかおらぬ。母上のためにも、わらわがやらねばならぬのじゃ”

王女とはいえ、わずか9歳の少女がそんな事を言わねばならないなんて……。レスターはどれだけ実の家族を追い詰めたんだろう。

あの愚かなもと王子は王族と国を追われ、王妃様の生国プスムラム共和国に渡った。そこではなんとかありつけた町工場の地味な単純作業で働かされているらしい…と聞いた。
住処は寮の一室だとか。
相変わらずわがまま放題で遅刻や無断欠勤は日常茶飯事。嫌な事があるごとに“ボクは、ゼイレームの王子だぞ!お母様の王妃に言いつけてやるからな!”と喚いて、皆を辟易させているらしい。いずれ、仕事もクビになるだろう。

心を入れ替えて反省し真っ当に生きればまだ違った幸せもあるだろうに。彼は、とことん変わらないんだな…。

追放される前も弟が悪いだの周りが悪いだのと喚いて周囲のせいにし、反省のかけらも見られなかったらしい。
王妃の長子という身分にあぐらをかいていただけの王子は、堕ちるべくして墜ちていったんだ。