そして、アスター王子がこう告げた。

「先の襲撃事件で狙われたこのデカルト・リッツ城ですが、かの犯人を撃退したのは私たちだけの力ではありませんでした。ともに戦いぬいた勇気ある仲間を紹介いたします」

アスター王子の合図で、従騎士としての正装をしたフランクスとドレスアップしたマリア王女が進み出た。

「我が妹、マリア・フォン・ゼイレーム。そして婚約者のフランクス・フォン・ルド。マリアはその類まれなる魔力により、フランクスは騎士として命がけで戦いに挑み、我が国を護りました」

2人は紹介されると、紳士と淑女の礼を披露する。マリア王女はまだ十歳に満たない少女と知ると、ざわめきがわき起こる。

「マリアはまだ幼いですが、その聡明さと勇気は並みの男性以上のものがあります」

アスター王子はしっかりとその点をフォローした後に、世界中の重鎮に向けて宣言した。

「その活躍により、わが父たる国王陛下、そして王太子たる私より、公爵の爵位を授与いたします。そして、2人が私が国王として即位した後に良き支えとなる期待をしたい」

アスター王子が遂にそのことを公表した。
マリア王女が王族から追放されたレスターの妹という事実は消えない。表沙汰にはなってないものの、レスターがあのドン・コレッツイの思惑に踊らされ、呪術師に協力したことは事実。処刑されなかっただけでもマシなレベルの重罪を犯したんだ。

でもそれは、マリア王女には一切関係ない…ないけど。同じ母から生まれた同母妹ということで、彼女も色眼鏡で見られてしまう。

だから、アスター王子は異母妹のためにこの機会を用意した。彼女はなんの罪もなく、むしろ国のために戦う勇気ある女性と知らしめるために。