そして、国教であるルスド教の大司祭立ち会いのもと、婚約誓約書へのサインを行う。
ここに立ち会う全員が証人となる。
こんなふうに、100近い各国首脳が見守るなか婚約をする機会なんてなかなか無い。

もっとも、くだらない理由で一方的に婚約破棄してきたレスター王子と違い、アスター王子は絶対なにがあろうと誓いを護ってくれる。それは、この1年あまりともに過ごしてきた中で培ってきた信頼。
わたしと彼はちゃんと理解しあい、信頼し合っている。
彼は、王子という身分をひけらかした事など一度もないし、王子という身分に甘えたり傲ったりもなかった。
むしろ、それ以上に相応しくあるように、努力をしていた。

ストリーキング(全裸疾走)したり、多少変態なところはあるけれど。

アスター王子が先に誓約書にサインをするのを見守ったあと、いよいよ自分自身の番だ。

この婚約誓約書にサインすればアスター王子の正式な婚約者として、王族に準じた身分となる。

レスター王子の時はここまで緊張しなかった。

羽根ペンを渡されて、インク壺に先を浸す。

(うーん……ちゃんと練習したから大丈夫……)

少しだけ、手が震えてる。

すると、アスター王子が小声でこんな事を囁いてきた。

「ミリィ、後で馬上槍試合の稽古をつけてやるから頑張れ」