婚約式なのに、過剰なまでに手厚く万全な警備体制もそうだ。

会場だけで数千人単位の通騎士や兵士をはじめとして、ドラゴンに騎乗したノプットの龍騎士までもが数十騎空を警護している。

ノプットのキルシェ女王陛下はわたしの母の従姉であり、義理の姉。アスター王子もわたしもその王家の血を引いていて、その強い結びつきをアピールする効果もあるだろう。

「先日、我が国を狙った不逞な輩がいたことは、皆様もご存知でしょう」

国王陛下自ら、その事件に触れられた。やはりあれだけの大きな事件は隠しきれるものではない。だからあえて国王陛下は先手を打ち、先に公表されたんだろう。各国には情報が伝わっていたようで、賓客席はいろんな言語でざわめいた。

「その犯人は、かつてこの国の王族の血を引いた者でした」

国王陛下は余計な憶測をされたり誤った情報が出ないように、とシンプルながら必要な話をされた。さすが、豪胆で知られる国王陛下。ストレートかつ大胆に事の次第を説明される。

「わが国を裏切り他国へついたにもかかわらず、自らが正統な王だと名乗り、理不尽な侵攻を。ですが……やはり神は正しい者へ味方しました。わが国の誇る騎士団や兵団が勇ましく戦い、さらにノプットよりの援軍を得……さらに、千年龍のドラゴンの加護を得られたのです。それも、我が息子アスターの妃となるミリュエール嬢の功績であります」

突然名前を呼ばれたけど、事前に打ち合わせでお聞きしていたから、アクアの歩を進めて畏れ多くも国王陛下の傍らに進み出た。