「この度は息子とその妃になる者のためにお集まりいただき、大変ありがたく思います」

さすが武人だけあって、国王陛下の張りのあるお声は朗々と会場の隅々まで響きわたる。

わたしとアスター王子が馬場へ入場したあと、なんと国王陛下自らがわたしたちのために婚約式な進行役を買ってくださったんだ。

広い馬場に円陣のような配置で各国首脳が座り、その通訳や警備付き人など何百人もの視線が注がれても、さすが国王陛下は少しも動揺などなさらない。国王陛下としての正装で、威風堂々たる立ち姿でいらした。

なぜ、国王陛下がわざわざこのような役割を買われたのか?

それはやはり、ゼイレームに敵対した国々への牽制と、アスター王子が国王陛下の後継者たる王太子となる事実を周辺国へ知らしめたいから…に他ならない。

つい先日あった、ゼイレームへの侵攻および襲撃事件。

ゲストで早い人はすでに到着していて、その事件に遭った。
絶対安全な場所に避難して無事だったものの…。

ゼイレームが襲われダメージを受けた事実は変わりない。

だから、あえて国王陛下は自ら動かれることにしたんだ。ゼイレームの威信と信頼回復、そして安全のために。